焼き鳥屋ひびきの粉飾決算にみる非上場会社の閉鎖性とその課題

おはようございます。川越・ふじみ野・富士見・三芳エリアで活動する公認会計士・税理士の榎本です。

 

先日、民事再生法を適用とした焼き鳥屋ひびきが粉飾決算をしていたというニュースを見て、第3者の目が入りにくい非上場会社への融資の怖さを改めて目の当たりにしました。今日はそのあたりの閉鎖性と何か対策がないのか考えてみます。

 

(以前書いた借入金に関しての記事は以下参照)

 

焼き鳥やひびきの倒産ニュースを見て借入金について改めて考えてみた

粉飾決算でどんなことをしていたか?

いくつかのリサーチ会社が公表している実態を見ると、複数の粉飾決算が明らかになっていました。

 

架空売上、架空固定資産の計上、そして普段あまり耳にしない多重リース債務による資金繰り対策。

 

粉飾のきっかけは、10年ほど前に起きた納税資金の資金繰り問題がきっかけとのこと。

 

この時を機に架空売上に手を染めたことに始まり、架空売上で積みあがった現金の残高を帳消しにするために、架空の固定資産計上と進んだようです。

 

また、これとは別に、複数のリース資産について、リース会社にリース機器を売却するサプライヤーなどとグルになるなどして行う多重リースで一時的な資金調達を行っていたことも書かれていました。

 

こうしたことが、2000年代後半からお粉っわれていたので実に10年以上の期間こうした不正に手を染めてきたようです。

税理士や金融機関はなぜ気づかなかった?気づいていたならなぜ指摘しなかった?

ここまで複数の会計不正をしていたのに、どうして顧問税理士や金融機関は気づかなかったのか、何も知らない一般の方から見れば実に不思議に思えます。

 

外から見る限り詳細は不明ですが、顧問税理士や金融機関は、薄々気づいていたが、会社との関係を考慮し指摘しなかったのかとも思ってしまいます。

 

さらに言えば、何らかの見返りがあったのではないかと疑われても仕方ないと個人的には思います。

 

通常、顧問税理士がいる場合でしたら、定期的に会社に訪問し(通常この規模なら毎月か少なくとも2か月に1度)、帳簿を確認しますし、決算業務では、金額の大きな取引の確認や残高の確認を中心に行います。

 

ですので、客観的な立場で数字を俯瞰してみていれば、個人的な感覚として、少なくとも何らかの異常には気づくことができたと思うのですが、顧問税理士はどういった関与をしていたのでしょうか…

 

固定資産についても以前記事(以下参照)にしたように定期的な実地確認(実査)をしていれば気づいたはずでしょうし。

 

 

非上場会社における閉鎖性

先の粉飾についてもう少し踏み込んで考えてみますと、非上場会社における閉鎖性というものが一つの原因のように思えます。

 

日本のほとんどの会社がそうであるように、非上場会社は、上場会社のように第3者の株主がいることがほとんどなく、株主は親族を中心に占められていて、その方たちがそのまま役員をすることがほとんどです。

 

そのため、所有と経営が分離されることがなされないため、経営者に都合のよい会計処理ができてしまう問題も孕んでいます。通常は、税理士などが指導し、そういったことが起こらないように牽制をしますが、今回はそうしたことが恐らくなされていなかったのでしょう。

 

今回のような倒産が発生した時に、いつも思うのは、何の罪もない一般債権者(主には取引先)が損を被るのはホントに気の毒だなと。

 

特に、倒産した会社が営業債務の支払いができない状態だと、相手の取引先にとっては、売上代金の回収ができず、一気に資金繰りを悪くするかもしれない一大事ですし、連鎖倒産といったことも発生しかねません。

社会的影響のある会社には任意監査なども必要?融資の条件の一つにするのもありか

現行の法定監査とその状況

先に述べたように、善意の第三者(倒産の危機につながる事実を把握できていない取引先など)に被害がなるべく及ばないための構造的な対策がないのかと思いますが、現行の制度では、そうしたものはありません。

 

自社若しくは個人でセーフティ共済や民間の損害保険等の保険に加入しておくなどの対策を講じ、自分のみは自分で守るというのが一般的かと思います。

 

上場会社であれば、一般株主の数が非常に多くなるので、独立した第3者(公認会計士)による会計監査を義務付けておりますので、ある程度の牽制が利きます。

 

ただし、時折新聞などでも報じられますが、会計監査を受けていても不正会計が発生し問題となる事があります。

 

しかし、こうした制度が全くない状況に比べれば一定の牽制が利いているのも事実です。

 

非上場会社の場合は、原則このような監査制度はなく、資本金が5億円以上などの一定規模以上の会社にしか当該制度は強制されません。

 

中小の会社で資本金が5億円以上ある会社などめったにないので、目下、網掛けに引っかからない会社がほとんどです。

 

事実、自分が以前勤務していた会計事務所でも法人で1,000社以上のお客様がいらっしゃいましたが、全て非上場会社でしたし、もちろん資本金が5億円どころか1億円を超える会社も皆無に近かったです。

 

金融機関の立場で見てみると

翻って金融機関の立場はどうでしょうか。

 

金融機関もマイナス金利にもなる低金利時代の現代においては、収益環境も厳しく、どうしてもリスクをとっていく必要がありますので、リスクのある取引先へある程度利息収入をとることができる融資もせざる得ないと考えられます。

 

ただし、金融機関の仕組みが間接金融であり、融資の源泉は、一般消費者の預金も含めた他人の資金なので、融資判断をする際にはこうしたことを忘れてはなりません。

 

今回の件では、資金の出し手がどこまで粉飾に気づいていたのかわかりませんが、現在の融資審査の仕組みでは、会社の財政状態や経営成績に関して把握するのに十分な情報を入手できない場合もあり、粉飾を100%見抜くのが困難な場合があるのも事実でしょう。

 

こうしたことを踏まえると、融資側もリスクや金額の基準などで一定の水準を超える案件には任意監査(会社法や金商法等の法定監査ではなくあくまで2者間の契約に基づくもの)等で第3者のチェックを入れることを融資要件とすることも一案かと思います。

 

会計監査は、監査対象となる会社側の協力関係が全くない場合などには有効に機能しにくいといった点があり、不正行為に対して万能な仕組みではありませんが、閉鎖的になりがちな会社に第3者の目を入れる一つの牽制機能としては大いに効果はあるかと思います。

まとめ

日本の会社のほとんどは閉鎖的ですので、こうした構造の中で今回のような粉飾決算による倒産やそれに伴う債権者の被害を少しでも抑えるには、何らかの形で第3者の目を入れることが一つの解決策かなと個人的には思いました。

【子育て日記】
下の子は、歩くことが上手になったこともあり、出かけるときは必ず自分の靴を指さし、しっかりと自己主張。

 

長男は、クリスマスが近づいているので、サンタさんへの欲しいモノねだりが始まりましたが、ラジコンカー等以前よりもほしいものの中身も成長している感じです。