取締役と第3者責任について

おはようございます。
川越・ふじみ野・富士見・三芳エリアで活動する公認会計士・税理士の榎本です。

 

先日も書きましたが、焼き鳥屋ひびきが倒産した話で、取締役の責任について特段何も話題に上っていませんでしたが、実際のところどうなのかとふと思いましたので、今日は、取締役の責任や賠償について少し考えてみます。

税理士業務と会社法

税理士として仕事をしていると、お客様の会社は、オーナー役員の会社(株主と役員がイコール)がほとんどのため、取締役としての社会的な責任ということを意識する機会が監査法人に勤めていたことに比べ少ないと感じます。

 

上場会社の場合は、株主からのプレッシャーも含め取締役としての責任についていろいろな方面からありましたが、非上場会社の場合は、その範囲が限られています。

 

ただ、どんなに小さな会社でも法人である以上会社法の取締役としての立場は変わらず、ひとたび何かが起きた場合には第3者にたいしての損害賠償の責任を負う可能性があります。

取締役の義務・責任

まず、取締役についての義務や責任についてみてみますと、取締役は会社の機関としての業務執行の責任を負っております。

 

簡単に言うと会社が物を買ったり、売ったりする際の契約をする際などの窓口として会社の代表をするというイメージです。要するに、契約書にサインをする立場といとわかりやすいかもしれません。

 

ちなみに、通常個人商店の延長線上ですと、取締役が一名のことも多いので、その方が会社の代表を兼ねますが、少し規模が大きくなり、取締役が複数いる場合は、その中で代表取締役を決め、その方が会社を代表することが一般的です。

 

その業務執行においては、少し硬いい方になりますが、民法644条の善管注意義務及び会社法355条の忠実義務を守って行うことが求められます。もう少しイメージしやすい言い方でまとめますと主には以下のようなものがあります。
  1. 法律をきちんと守って行動しましょう(車のドライバーであれば信号無視をしない、一時停止を守るといった類のもの。違反となるものには、脱税や粉飾などの行為ももちろん含まれます)
  2. 管理・監視をしっかりしましょう(取締役が複数いる場合は、他の取締役がきちんとルールを守っているかを見守りること。イメージは、学生の時の風紀委員のように校内で悪さをしている人がいないかをしっかり見張るイメージ)
  3. 会社の経営判断を誤って会社に損失を与えないようにしよう(重要な決め事は慎重にしましょう。安易な意思決定で会社に損害を与えてはいけませんよというイメージ)

 

以上のような義務を負っており、それらに違反した場合は、当然賠償責任が発生する可能性があります(普通にお仕事をされていればこのようなことになる事は、極めてまれですが、あくまで参考までに書いています)

 

賠償責任の相手として考えられるのは、①第3者、②会社、③株主がありますが、非上場会社の場合は、オーナー一族が株主を兼ねている場合が多いので、②や③からの訴えというのは極めてまれです。

 

株主が一定数(7名)以上いないと株式会社を作れなかった時代(旧商法の時代)に作られた会社の場合ですと、外部の株主が存在する場合もあり、注意が必要ですが、会社法改正後1人株主でも会社を作れるようになった現在では、基本的には賠償責任の対象は、①が主となります。

第3者への賠償

先述したような決まり事を守らずに第3者へ損害を与えた場合には、取締役はその責任追及の対象になります。例えば、
  • 売った商品に欠陥があり、ユーザー側で事故が起きた
  • 商品の一部に不備があり、健康被害が出た
  • 工事に不備があり、事故が発生
  • 会社の経営が行き詰まり、請け負った仕事が未完成となり相手方に損害発生
  • 食中毒を引き起こした
  • 不正経理が発覚し、金融機関に損害が発生
  • 従業員が職務中に交通事故を起こした   等々

 

以上はほんの一例ですが、第3者に損害が発生した場合は、取締役としての任務懈怠(注意が行き届いていなかったなど)の責任を追及されることがあります(会社法429条)。

 

実際の責任追及や損害賠償の金額は、事例毎に様々ですが、会社運営上このような事故にあった場合に備えて、役員の損害賠償保険への加入は必ず行う必要があります。

 

またこの第3者への賠償とは別に、役員が自分や第3者(知り合いや親族等)の便宜を図り会社に損害を与える著しく不当な行為(背任行為)をし、会社に損害を与えた場合は、1000万円以下の罰金または十年以下の懲役若しくは、その両方を課されることもあります(会社法960条)。

 

ただし、この特別背任にあたるかどうかは、第3者委員会の判断など専門家の判断をもとに裁判によって決定することがほとんどですので、よほどの事例にならない限りは、該当することはないかと思います。

まとめ

今回は、取締役の責任と損害賠償についてまとめてみました。普段、税務の仕事をしていると直接取締役の責任などについて話すことはないかもしれませんが、お客様と話す中で、ふと出てきたときにこたえられる程度の知識として持っておく必要はあるかと思います。

【子育て日記】
長男は、歯磨きの重要性を理解し、最近は自発的に歯磨きに行くようになりましたが、下の子はまだ×2。
よく食べる割に歯磨きをいやがるので、大変(´;ω;`) 虫歯になったら大変❗️