役員報酬の定期同額処理で起こりえる勘違い

おはようございます。
川越・ふじみ野・富士見・三芳エリアで活動する公認会計士・税理士の榎本です。

 

会社の役員に支払う毎月のお給与(役員報酬)については、原則同額ですというお話を以前何度か他の記事で書きました。

 

この定期同額という点で先日とある資料を見ていたら、少し注意が必要なことを見つけたので、簡単にご紹介いたします。

定期同額は、支給とセット

これから会社を作られる方から役員の報酬はどのように支払えばよいかとよく聞かれます。

 

その時にお伝えする上で注意していただく点は、株主総会等の決議をもって決めることと毎月のお給料は必ず同額にするという点です(法人税法34条)。

 

この株主総会の決議というのは、決算が終わった直後(一般的には2か月以内の定時)に行われます。

 

そこで、次年度の役員の給与について決めることになりますので、変更がある場合は、このタイミングを境に同額かどうかという判定になります。

 

この定期同額給与で注意すべき点は、先述した毎月の支給額が同額であることはもちろんのこと、しっかりと支払われていることが大前提となります。
ですので、以下の事例のようなことは絶対にしないようにしましょう。

絶対やってはいけない事例

ある会社での決算の際の出来事(あくまで架空ですがよくありそうなお話)。

 

社長:今期は好調に来たなぁ。

 

経理部長:社長、決算を締めてみたところ、思っていたよりも利益が出ちゃいましたがどうしましょう?

 

社長は、どうにかしてもう少し利益を抑えたいと考えました。そこで、社長が考えました。

 

社長:よし、役員報酬をもう少し高くしよう。ただ、役員報酬は定期同額という話を聞いたことがあるから、毎月同じにしないとまずいなぁ。

 

社長:それなら、こうしたらどうだろう。定期同額になればいいわけだから、株主総会の時期まで遡って支給予定の数字を見直しちゃおう。見直し分はとりあえず、未払で処理すればいいか。

 

経理部長:それは妙案ですね。

 

そこで、社長は、株主総会の時期までさかのぼって支給予定の数字を見直し、金額を引き上げ、引き上げ分については、過去の出来事なのでひとまず決算処理では、給与の未払金として処理をしました。

 

社長が考えたのは、こうすれば、一応見かけ上は毎月同額になるからいいだろうと…。

 

こうしたことは、税務調査の際に指摘され、認められなくなりますので絶対にやめましょう!

年末調整の処理とセットで考える

上記事例では、表面上(会計帳簿上)役員報酬の金額が毎月同じように見えます。

 

しかし、法人が支払った役員のお給与は、従業員分と同様に、原則毎月源泉徴収簿に集計され、その結果をもって年末調整を行いますので、仮に法人の会計帳簿に記載される金額が、見かけ上同額に見えても、年末調整を必ず挟むためそこで差が出てしまいます。

 

つまり、年末調整の際の金額は、見直し前の金額で所得税を計算しますが、法人の会計帳簿上は、見直し後の金額が記載されるため、その金額と異なってしまいます。

 

この点については、税務調査の際に指摘の対象になります。また、先述したような調整をすれば、役員給与の未払金が会計帳簿に記載されることになり、税務調査官もすぐにその違和感に気づき指摘することは間違いないと思います。

 

こういった形で指摘を受けた場合は、仮装・隠ぺい行為をしたと税務調査官に考えられ、本来定期同額で支払ったはずの当初の金額まで否認されてしまい、思わぬ資金流出を招きかねません。

 

ですので、先に書いた定期同額給与は、支払とセットで考え、会計上の数値が毎月同額になればいいという表面上のことではないということを改めて認識いただければと思います。

まとめ

役員報酬に関しての税制改正がなされてからすでに10年以上が経過し、定期同額という認識は世間的に認知されているかもしれませんが、その言葉尻だけをとらえて、支払のことをおろそかにした処理をすると思わぬ落とし穴にはまることがあるということがあります。

 

そうしたことがないように役員報酬の件については、慎重に処理をしていく必要があります。

【子育て日記】
下の子は帰って手を洗うと言うのがわかって来たのか兄を誘います。兄も早くおやつが食べたいので一緒に手を洗いに行ってくれます。

 

このまま兄妹仲良く歩んでくれると嬉しいところです☻