事業のリスクはどこまで見積もることができるか~想定外を想定する!?~

おはようございます。
川越・ふじみ野・富士見・三芳エリアで活動する公認会計士・税理士の榎本です。

 

以前担当していた会社が先日読んだ新聞に記載されていました。

 

内容は、海外工事の進捗遅延や突発的なコストが頻発したことを主因とした多額の赤字計上に伴う業績の修正。

 

この工事は、前期も別の要因で予想外の多額の赤字を計上しており、工事の原価管理やリスクの見積もりの難しさを改めて考えさせられる内容でした。今日は、そのあたりについて少し考えてみます。

事業のリスクを見積もるのも”力”の一つか!?

監査法人、会計事務所で建設業の経理や監査を経験してみて思うのは、工事開始前にすべてのコストを網羅的に見積もることがいかに難しいかということです。

 

工事を請け負う会社では、発生しうるあらゆるリスクやコストを想定して予算をはじきますが、いざ工事が始まってみると当初見えていなかった事象が発現し、工事費用が増加することは往々にしてあります。

 

これらの見積もりは、基本的に過去の事象・経験や類似の工事をもとに考えるのが一般的かと思いますが、工事の入札や受注のために受注金額を意識すれば、全てを織り込むことが時には難しく、発現可能性の低いモノなどは発生コストから除かれたりします。

 

このような原価の見積もりは、工事の技術者としての経験や感覚に依拠するところも多く、そういったモノも一つの能力であり、その方たちの結集が会社としての実力につながっています。

 

一方、過去の実績や過去に経験しているものであっても、毎回同じようになるかというとそうとも限らないのが個別工事の難しさかなと経理や監査の視点を通して感じました。

 

いわゆる「想定外」の事象は、大小あるものの、必ずといっていいほど個別工事には発生しますし、そういった事象を一つずつクリアし、進めることが工事技術者として求められるというおはなしも仕事をととおして聞きました。

 

そして、この管理能力の差が、最終的には会社の利益に直結しますので、熟練した技術者の方が減っていくと、必然的に会社としての体力も衰えてしまいます。

 

昨年来大手のプラントメーカー各社で巨額の赤字工事が頻発して発生しており、中には将来的に海外工事の縮小を考えたり、撤退をするという声も聞こえてきており、結果的に日本の産業の弱体化が危惧されています。

 

ただ、難しいのは、事業にリスクがあるから、撤退という選択肢もあるものの、技術や経験を伝承していくことを考えると、簡単に撤退もできないのが実情です。

 

では、人に代わって、AIなどが進化すれば、あらゆるビッグデータをもとに、各工事で発生するリスクなどを事前に洗い出しどう進捗管理すればよいかの答えをくれるだろうかというと個人的には疑問符が付きます。

 

AIもある程度は力になってくれると思いますが、それだけで網羅的にすべてカバーできるとは思えず、最後は人間が考えて柔軟に対応していく必要があるというのが現実的ではないでしょうか。

税理士業でのリスク管理

翻って、税理士業についてはこのようなリスク管理がどうか考えてみます。

 

税理士業の多くは、事業年度を一つの単位として決算・申告を行いますので、比較的定型化されているところが多くあります。

 

従前からお付き合いのあるお客様であったり、十分にコミュニケーションが取れているお客様ですと、お客様の情報を税理士がしっかりつかめており、お客様の考え方などもある程度理解できるため、通常の業務でもそれほどリスクが顕在化することは少ないと思います。

 

一方、新規のお客様であったり、単発の場合はお客様の情報を税理士側が持っていない若しくは情報が少ないため、適用すべき税制や諸届等(特に消費税関係)の対応を見落とすリスクが相対的には高くなってしまいます。

 

そこで、このようなことを少しでも防止するため、自分自身もチェックリストなどを使い、可能な限り漏れや失念がないように対応はしております。

 

ただ、これらも先述した工事のように過去の経験などをもとに作られている部分があるので、完全なものではないという認識です。

 

チェックリストで漏れを防止しつつ、お客様からのヒアリングと合わせて業務に漏れや落ち度がないようにすることが最終的には大切になってきます。

 

また、発想を変え、仕事の受注そのものの意思決定をする際に、コスト面での採算割れが想定される場合や難易度の面で難しい場合などは無理して取らないこともリスク管理の一つ過と思います。

 

先の工事のお話では、技術・経験の伝承のためどうしてもとらざるを得ない事情があるため、この考え方を全面的に押し出すのは難しいですが、税理士業の場合は、必ずしもそうではないかと。

 

確かに、相続税申告業務などは、定期的にあるものではないので、経験や技術の精度を落とさないために受注を継続していくことが必要な業務も中にはありますが、全体的に見るとこういったものは少ないかなという印象です。

まとめ

事業を行う上でリスクゼロはあり得ないが、可能な限り見積もれるものは見積もり、その低減を図れるようにすることがお客様・税理士双方にとって望ましいことなので、そのあたりを今回の記事では考えさせられました。

 

もう一つは、矛盾する言い方ですが、想定外を想定する力も必要になるのかなとも思ったりします。

【子育て日記】
長男が時折言葉遣いが悪いので注意し、「誰のマネ?」と聞くと、「あなたです」といわれ、ただただ反省(´;ω;`)
妹は、ここ数日目やにがひどく初めての目薬にイヤイヤ(´;ω;`)