焼き鳥やひびきの倒産ニュースを見て借入金について改めて考えてみた
おはようございます。
川越・ふじみ野・富士見・三芳エリアで活動する公認会計士・税理士の榎本です。
先日、埼玉県内を中心に焼き鳥店を展開する焼き鳥屋の響きが民事再生法の申請をしたニュースを見ました。ちょっと前にテレビで取り上げられており、「なんで!?」というのが最初に感じた印象です。
ただ、いくつかの新聞報道を見るとその結果に納得してしまいました。倒産という結果に至る原因は、売上減少や、新規事業の不調、過剰投資などいくつか理由が考えられますが、個人的には、身の丈以上の投資と融資が一番の原因かと思います。売上が15億円前後で有利子負債が77億円。ニュースでその金額を見て一瞬目を疑い、驚愕しました。
今日は、借入れをする際に検討すべき点についてアウトプットして整理してみます。
借入は中小事業者の規模の拡大や発展には必要
事業を行っているとその規模を拡大したり、新規の事業をしたりして会社の発展を考えるのは、経営者としては自然なことです。
この事業のためには、既存事業の売上規模を拡大するため、営業エリアの拡大、販促投資、増産投資、M&A等いくつかの手段が考えられます。
しかし、いずれの手段をとるにしても、資金の確保は必須ですが、都合よく自己資金ですべて賄えることというのは、中々難しいのが実情。必要なときに必要な量の自己資金を確保しておくことは中々至難です。
このようなときに、上場企業であれば、資金調達手段として、新株や新株予約権の発行によるイクイティファイナンス、社債発行等資本市場を通した資金調達、銀行を通した借り入れによる調達、ファンドからの第三者増資等様々な手段が考えられますが、非上場の中小企業の場合は、資金調達手段も限られており、金融機関からの借入金がメインの資金調達手段というのが一般的です。
この金融機関からの融資には、主に運転資金の調達といった短期融資と設備資金と呼ばれる長期の融資がありますが、いずれも返済の原資は売上から原価を引いた利益をベースとしたキャッシュが基になります。
これらの資金調達をする際には、将来の事業計画、見通し、資金繰りの計画、返済計画といった将来見通しを金融機関に説明し、客観的に見て返済が可能と考えられる場合に借りることになります。
当然、融資をする金融期間にとっては、返済を滞りなくしていただくために、当該見通しについて批判的な見方をしますが、最終的には経営者の主張に筋が通っており、信頼ができるものであれば、融資は実行されるのが一般的です。
借入の際の将来計画にはストレスやリスクの折り込みが必要
一方、融資に際しての計画や見通しといった将来事象には、不確実性といったものがつきものです。
なぜなら、将来見通しはこれから起こる事であり、現在の事象を前提につくりあげられたものであったり、全く未知の事象について経営者の経験や知見をもとに作ったりするので、会計の世界でも減損会計や税効果会計、M&Aの将来計画を作るにはこのような不確実性を考慮して、ストレスをかけたり、変動が想定される要素について、ネガティブに見ることが多いです。
変動要素としては、市場の成長、市場占有率、需要予測等が考えられますが、これらの要素にストレスをかけたり、ネガティブに見たりするのは、全てを想定通りとした場合で借り入れをすると、目一杯の借入金になってしまい、将来、これらの前提に狂いが生じた際に、方向転換をしにくくするのを避けることができるようにするためです。
また、これらの変動要素について、どの程度のブレやストレスをかけるかといったのは、ケースバイケースですが、過去の実績や現在の環境、市場に対する見通し等時間軸を考慮して検討する必要があります。ただし、新規の案件の場合など過去の実績がない場合には、ある程度この変動要素については、変動の幅などを余裕を持ってみる必要があると考えられます。
以上のようなことを考慮することで、当初想定したほど売上が伸びなかったり、新規事業が不調だったりした場合などでも、即座に資金繰りが行き詰まったり、債務超過に陥るといったことをさけ、方向転換をするための時間を確保することにつながるかと思います。
まとめ
今回の事案は、売上の数倍の負債が最終的に倒産した時点で計上されていたので、ある一時点で見たときにはかなり無理があると考えられますが、時間軸で見た場合、そこに至るまでのプロセスがどうであったかも同時に考えるべきだと思います。
将来への見通しや事業の予測などでどこか甘い部分があったのかといった点、どこかの時点でひずみや無理がなかったのかといった点等、学ぶことはいくつかあるのではないでしょうか。
【子育て日記】
昨日の朝は長男のご機嫌が斜めだったこともあり、朝の宿題はできずすべて夜へ。下の子もお兄ちゃんのことを心配そうに見てました。