店舗開店費用と開業費について考えてみた

おはようございます。

 

川越・ふじみ野・三芳・富士見エリアで活動する公認会計士・税理士の榎本です。

 

先日お客様のご相談で少し法令とその解釈について少し考える機会がありましたので、ご紹介いたします。

開業費と繰延資産

以前の記事で繰延資産について少しご紹介しましたが、繰延資産のうちよく使われるものの一つに「開業費」があります。

 

事業を開始する際には、初期投資と呼ばれる諸々の経費がかかり、そのうち車や備品など比較的金額が大きく固定資産として計上しないモノについては、初年度に経費として処理せず将来的に効果が及ぶ期間にわたり「繰り延べる」ながら費用処理することで、費用を平準化できます。

 

通常「開業費」として考えられるものは、例えば飲食店やコンビニエンスストア等の店舗での商売をする場合には、1号店の開業にあたるものだけをとらえることが多いと思います。

 

確かに、開業費の範囲については、所得税施行令7条1項1号で以下のように書かれておりますので、事業の開始を個人の開業と同義ととらえれば、1号店目の開店費用のみという捉え方をすることになります。
開業という言葉の作りを考えますと、「業を開く」と書きますので、字面のままとらえれば最初の事業開始部分という捉え方になります。

 

不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業を開始するまでの間に開業準備のために特別に支出する費用

 

また、通常は2号店以降の開設にあたっては、既に既存店の営業が行われている中での支出になりますので、事業全体の営業費として支出事業年度に費用として処理するのが一般的な処理として行われています。

開業費の「事業開始」を拡大解釈してみると

一方で、法律や法令は、解釈によってある程度捉え方を柔軟にできます。

 

今回のコロナ禍においても新型インフルエンザ特措法を解釈を変えて適用するかどうかといった議論もありましたし、法律の文はシンプルに書かれていることも多く、対象となる条文をその法律の立法趣旨や背景を考えながら適用しますので、税法についてもある程度解釈を広げたり、狭めたりすることは往々にしてあります。

 

このように法律や法令を使う者の解釈によって開業費のとらえ方を少し広く捉える場合、「事業の開始」をどのようにとらえるかがポイントとなります。

 

すなわち、一番最初のオープンのみを事業の開始ととらえるならば、2号店以降は先ほど書いたように通常の営業費の一部として処理されることになりますが、2号店目以降のオープンについてもそれぞれのお店を独立したものとして考え、それぞれのお店のオープンに事業の開始があると考えれば、1号店の費用だけではなく、2号店以降の開店費用についても繰延資産としての開業費の計上は可能ではないかと個人的には考えます。

 

そもそも開業費の意味合いが、繰延資産として将来にその効果が及ぶ費用であるならば、1号店だけではなく、2号店以降もその開店にあたって支出したそのお店の営業に関連する支出は、1号店同様に繰延資産として計上して、段階的に費用化するといったことが当然許容されるからです。

まとめ

今回は、開業費の範囲をどうとらえるかについて考えてみましたが、個人的には税理士や会計士をしていて面白いと思うことの一つに、法律、法令、基準といったものをどう適用するかを実務と合わせながら考えることが挙げられます。

 

お客様にとって、その捉え方や考え方で税金計算の結果や利益の数値などが異なりますので、常に自分事ととらえながらこうしたことを考えていくことは専門家としてとても大切だと改めて思いました。

【子育て日記】
下の子が最近よく寝ます。成長期か。。。

 

上の子は相変わらず、昼寝をしません。夏の疲れが出て体調壊さないといいのですが。