修繕工事をした際に修繕費か資本的支出にするかは中々奥が深い

おはようございます。

 

川越・ふじみ野・富士見・三芳エリアで活動する公認会計士・税理士の榎本です。

 

メーカーの経理担当をしていた時やメーカーの監査担当当時は、定期的に工場の修繕や改修があり、これらの処理の判断をどうするかについては、頻繁にお目にかかっていました。

 

しかし、小規模事業者の場合は修繕等は頻繁にあるものではないので、時折発生する修繕工事の内容を修繕費と資本的支出に分けることが難しいのが実情です。

 

今日はそのあたりを少し整理してみます。

修繕費と資本的支出

固定資産を所有しているお客様で今度改修工事をするけどこれって費用で落とせるかと聞かれることが時折あります。

 

会計上は、明確なものがないのであくまで税務上の判定フロー(法人税法基本通達7-8のあたりを中心に)に則って判断することになりますが、いくつかポイントがありますので改めて確認します。

 

まずは、形式基準と実質基準に分けて考えます。

 

形式基準では、金額基準や周期(修繕の頻度)をもとに判断することになります。20万円未満なのかどうかといった点、修繕の周期がおおむね3年をめどに行っているかどうか等。

 

また、実質基準は、固定資産の価値を増加し耐用年数を延長するほどのモノかどうかというかという点で判断することになりますが、実務では、この辺りの判断が中々やっかいです。形式基準は、型にはめれば該当するかどうか判断はつきやすいですが、実務では価値の増加や耐用年数の延長に影響するかなどは専門的な知識がないのが普通なので、客観的な判断をするのは正直難しいところがあり、主観もまじってしまいがちです。

 

明らかに現状維持・原状回復といった類のモノであれば、修繕費でそうではなく価値の増加やより長く使えるようになるものであれば固定資産計上と、文章では簡単に書けますが、ではどのあたりにポイントがあるのかは正直難しいこともあります。

 

これは、事例や実例、工事内容等いくつかの情報を総合的に勘案して個別判断が必要になります。実務においては、みんなが同じ回答を示すとも限らないので、気になるときは周りの意見を聞かれるのも一つかと思います。

 

また、工事の金額が一見多額であっても、内容を見ると原状回復であったり、現状維持のモノが含まれていることがあったりしますので、金額が大きいからすぐに資本的支出といった安易な判断をしないようにすることが大切です。

修繕工事の中に少額減価償却資産として分けられる可能性がないかも探る

先ほど書いたように、工事の請求書の金額がたとえ多額であっても、まずは工事明細をしっかり見ることが大切です。工事明細がしっかりしている場合には、中身をちゃんと見ていきますと、個々の資産で10万円未満の消耗品が含まれていることがあります。

 

明細がしっかりしていれば、そのあたりを個々に分けて、10万円未満の少額減価償却資産として処理し、金額の大きな機器や工事をまとめて資本的支出や新規資産として計上することも実務上は可能です。

 

ここで、10万円未満の少額資産は、一体として機能する一つの資産を範囲として考えます。例えば、応接セットのようなものであれば、テーブルや机とイスを一体として機能する資産としてとらえます。これは、個々に存在してもその機能が生かせないと考えられる場合は、固定資産が本来持つ機能を生かせる範囲を一体の範囲としてとらえるためです。

 

ちなみに、経営が厳しい場合は、保守的に資産計上処理し、少しでも費用を平準化するという判断もありです。税務上は、税金が増える方向の処理であればそれほど厳しいことを言わないので。ただ、会計監査が必要な会社ではそのあたりは資産計上について厳しくみられることがありますが…会計では、保守主義の原則が働き、資産計上は慎重になりますので。

まとめ

修繕や改修工事はそれほど頻繁に行うものではありませんので、中々知識や経験として積みあがりにくいものです。

 

ですので、事例が発生した時は、極力その時の資料をまとめ、修繕にしたか資本的支出にしたかの判断過程をまとめて置くことが、将来に役立ちますので、その点に配慮した経理が個人的には理想です。

【子育て日記】
ここ数日下の子は、病児保育園を利用。以前は、預けてもすんなりお別れできましたが、段々普段との違いに気づくようになったのか、今回はちょっと泣いてしまう場面も。上の子は、そのあたりがしっかりわかっているのでうまく理解できるのですが、まだ1歳半だとその点が難しいのかもしれません。