一人社長の役員報酬と関連する税金

おはようございます。

 

川越・ふじみ野・富士見・三芳エリアで活動する公認会計士・税理士の榎本です。

 

個人事業主の方は、事業が軌道に乗り、売上と利益が増えてきますと、自分で会社を作り、その会社に事業を継続するいわゆる法人成りをすることがありますが、その際に検討することの一つとして役員報酬があります。

 

以前、この役員報酬についていつまでに決めればよいかといったことを中心に記事にしましたので、ご参考までに。

 

役員報酬と給与所得控除

個人の所得税は、累進課税という形で、所得が増えると税率が上がりますしので、会社設立によって、会社から役員報酬をとる形式にすれば、場合によっては売上やその他の条件が同じでも全体の税金が抑えられます。

 

これは、役員報酬という形にすることで、個人事業主時代にはなかった給与所得控除というみなしの経費を使えるからです。

 

個人事業主として利益が増え、所得税等の金額が増えてきた際に、会社設立によって役員報酬をうまく使うことで、ある程度の節税が図れる場合があります。

 

金額については、中学校の数学で習った方程式を使えば、目安となる金額をはじくこともできます。

個人事業主と役員報酬をとる場合の違い

標準的な計算式としては次の通りです。まずは、以下のように見込利益を決めることが大事です。

 

見込利益については、(見込売上)-(見込経費)。

 

この辺りについては、最初は、細かくは見積もれないと思いますので、社長ご自身が想定できる範囲内で見積もりつつ、無理のない数字を置くとよいです。

 

見込利益-役員報酬+役員報酬×14%(※1)=0

 

しかし、上記の式で計算した役員報酬をそのまま使うと、確かに理論上法人税はかかりませんが、会社に利益が全く残りません。

 

また、社会保険の費用負担が増えることで、保険料も含めた税金が上がってしまうことがあります。

 

ですので、会社に稼いだ利益を残し、社会保険費用を抑えることを考えれば、求めた金額の6掛け、7掛け程度にしておくとよいでしょう。

 

ただし、その場合は、残った利益に約3割の法人税がかかりますので、手元に残る金額は、その分を差し引いた金額が目安となります。

 

究極的に税金を抑えようとしますと、結果的に会社に利益が残りませんので、実際のところは、税金を払って、残りの7割を会社に残すという方針が現実的な考え方になります。

 

例:見込利益700万円の場合 役員報酬をXとおくと
700=1.14X X=614万円(年間)51万円(月)となります。

 

この場合、毎月の役員報酬を51万円とすると 51×12×1.14=697万円となりほとんど利益がほとんど残りませんので、少し手元に残すのであれば、例えば、6割程度の30万円とすると30×12×1.14=410万円となり、(700-410)×28%(※2)=81万円が税金になりますので、手元に残るのは、700-410⁻81=209万円と稼ぎの3割は手元に残せます。

 

※1:社会保険料率については、健康保険の料率(9.73%;介護保険なし)と厚生年金料率(18.3%)と約1/2(会社負担分)で計算し、14%と仮定
※2:法人税については、実効税率が27%強なので、28%と仮定

 

ここで、法人税は、81万円となりましたが、所得税については、9万円となります(夫婦共働きで子供が16歳未満の子供が二人を想定)。

またこの他にも、住民税は、18万円、社会保険についても会社負担と合わせて101万円となり、税金関連でおよそ210万円。

一方、同じ前提で個人事業主の場合でしたら、所得税69万円、住民税56万円、保険と年金で77万円、事業税21万円の合計223万円と法人化する場合と比べて13万円ほど高いことがわかります。

 

また、法人の場合社会保険料が高く見えますが、その分厚生年金としてもらえる額も増えるので、将来もらえる年金も含めて考えた場合は、見た目(13万円)以上の差はあるといえるでしょう。

 

これらをまとめると以下の一覧。(単位:万円)

 

個人事業主
法人化
差額
利益
700
700
個人所得税
69
9
-60
個人住民税
56
18
-38
健康保険・年金
77
101
24
事業税
21
-21
法人税(法人住民税・事業税含む)
0
81
81
税金合計
223
210
-13

まとめ

個人事業主から法人化した時に、役員報酬を検討するにあたっていくらがいいかという疑問をよく聞きますが、まずは会社の利益と均衡する金額を求めた後に、所得税だけではなく社会保険や法人税等の他の税金を考慮することで個人事業主と比較し、メリットがある金額が見えてきます。

 

個人や法人を取り巻く税金は、一つではなく多岐にわたるものなので、個々の関連性を理解しつつ、適当な金額を模索していく必要があるかなと今回の記事をまとめてみて感じました。

 

もし、ご自分の役員報酬が適当かどうか疑問をお持ちの場合は、一度顧問税理士にご相談いただくのがよいかと思います。

【子育て日記】
先週、子供たちが今まで練習してきたお遊戯の発表会がありました。

 

下の子は、初めての経験でしたが、みんなの前で音楽に合わせて踊ったり歌えていたので、この一年の成長をすごく感じました。

 

長男は、保育園最高学年ということもあり、劇もたくさんのセリフがあったり、合奏も楽器を使った演奏したりと難易度が高いなぁと思い見ていましたが、いずれも立派にこなせていたのには感動(´;ω;`)

 

二人の写真をひたすらとっていたので、ゆっくりとは見れませんでしたが、二人の成長を感じることができ大変有意義な一日になりました。