ネットビジネスのアカウントを外部購入した場合の経理処理を考える
おはようございます。
川越・ふじみ野・富士見・三芳エリアで活動する公認会計士・税理士の榎本です。
現在は、ネットの普及で個人でも手軽にネットビジネスに参入しやすくなっている一方で、税務上の規定がネットビジネスに追いつけていないと感じることが時折あります。
試しに事例を使って考えてみたいと思います(後にも書きますが、ぴったりとはまる法令や通達がないのであくまで準用(適用対象としての明文化がされていないので類似のモノを使う)を考えての処理になります)。
事例:Aさんがあるビジネスをネットで展開するためにネット上のアカウントを取得。その後、そのアカウントを使い、ビジネスを行ってきたが、一旦そのビジネスから離れるため、当該アカウントを新規で参入するBさんに売却する。この場、BさんがAさんから購入するアカウントについて会計や税務でどのように考え、処理すればよいか。
アカウントをどう捉えるか
ネット上は、現実世界と異なり、物理的店舗のようなものは存在しません。
そこで、アカウントをどのようにとらえればしっくりくるか考える必要があります。
個人的には、アカウントは、ユーザーからすれば、そのアカウントを通して購入する商品やサービスがよいので、そこに買いに来ると考えると、現実の世界でいえば、実店舗に近いのではないかと思います。
そう考えたとき、現実世界の店舗であればすぐさま有形固定資産として考え、淡々と税務上処理をすればよいですが、実際ネット上のアカウントは物理的なモノでないため有形固定資産と考える処理するには無理があります。
では、税務や会計と結び付けるにはどう考えればよいか。
実際のビジネスにおいては、当該アカウントのユーザーによるカスタマーレビューの評価やリピーター顧客等の顧客基盤、当該アカウントの持つブランド力等無形のモノがそのアカウントの本源的価値として背景にあると考えられます。
少し話がそれますが、M&A等の世界では近年こういった目に見えない無形の価値あるものを会計上ののれんと分離して資産計上する潮流がありますので、その考え方を参考にすると、ネットビジネスにおけるアカウントにも同じようなことが言えるかと考えられます。
要するに、会計や税務の処理を前提とすると無形の資産として資産としてとらえることが最もしっくりくるのではないかと個人的には思います。
アカウントを購入した場合の処理
勘定科目は何が妥当か
それでは、価値ある資産としてのアカウントを外部より購入した場合は、会計や税務上どのような処理を考えればよいかというのが次の課題として出てきます。
冒頭にも書きましたが、会計や税務の世界がネットの世界に追いついていないこともあり、会計や税務の基準や法令等でぴったり当てはまるものは自分が調べたところ見当たりませんでしたので、個人的には準用という考え方を用いるしかないのが現実かなと思います。
では、事例でBさんが購入したアカウントについての会計や税務の処理をどう準用すればよいか考えます。
個人的に一番しっくりくるのは、税務上の繰延資産の考え方を使えばよいかと考えます。
ちなみに、法人税法施行令(所得税法施行令にも同様の規定あり)に列挙されている無形固定資産の一つである営業権も考えられなくはないですが、当該科目は一般的に帳簿上の資産、負債の差し引きである純資産と、買収にあたり将来CFなどから計算された買収額としての差額として計算されるのが一般です。
そのため、アカウントそのものを直接評価するのは難しいというのが個人的にあるので、営業権としてよりも税務上の繰延資産として考える方がしっくりくるかと思います。
税務上の繰延資産には、いくつかありますが、既に述べていますようにぴったり当てはまるものがないので、あくまで準用になり、個人的にしっくり来るのはノウハウの頭金等として紹介されている法人税法施行令14条1項6号ハのあたりの規定かなと考えます(所得税法施行令にも同様の規定があります)。
当該規定のお話はあくまで権利金等の費用であり、背景には契約に基づいて一定期間何らかの便益を受けるものなので、事例のように買い取る場合とずれがありますが、一方で、広義で考えれば売買も契約に基づくものととらえこの考え方を準用するのもありかと思いました。
償却期間について
償却期間についても、実際のところ効果の及ぶ期間など正確に測定はできないので、あくまで決めになりますが、法人税法基本通達8-2-3や以下の事例等を参考にすれば5年とするのが一つの考え方と考えます。
消費税について
基本的には、当該アカウントの購入によって何らかの便益を享受でき、対価を支払っているので、課税取引に該当すると考えられますので、仕入税額控除として処理することができます。
まとめ
今回は、近年増加しているネットビジネスに関してアカウントの売買という事例について考えてみました。
ネットビジネスは新しいビジネスなのでそれをフォローする会計や税務周りの基準や法令が追い付いていないところがあるので、会計士や税理士などの専門家が既存の法令や基準などの趣旨や背景を理解し、うまく適用していくしかないのが現実です。
将来的にはそのあたりが整備され、楽になっていくことを期待します。
【子育て日記】
今週は、下の子も順調に保育園に通えており一安心。鼻水と咳はまだ続いていますが…長男は、週末買ったドンジャラにはまっており、毎晩相手をしています。テレビの時間が減ったので、その点ではホントによかったです。