一個のモノに4つの価格が存在する「土地」

おはようございます。
川越・ふじみ野・富士見・三芳エリアで活動する公認会計士・税理士の榎本です。

 

先日土地の基準地価の公表がありましたが、全国的に首都圏や大都市圏を中心に土地価格が上昇した一方で、人口減少に悩まされる地方では押しなべて土地価格の下落傾向も見られました。今日は、その土地の価格について考えてみます。

 

土地は、経済原則である一物一価ではなく一物四価という形で一つの土地に複数の価格(評価)が付けられていますが、それぞれ目的や使い方が違いますので、そのあたりを少し掘り下げてみます。

四つの価格と主な特徴

一般の方にとって土地の売買は、人生でもそれほど何度もお目にかかるものではないため、その価格を判断する際に尺度となるものをしっかり持っていないと思わぬ価格で買ったり、売ったりしてしまいます。

 

土地の価格には4つあると先述しましたが、それぞれ意義や目的が異なります。

 

例えば、土地そのものを売ったり買ったりする際の尺度であったり、相続や贈与の際の評価であったり、固定資産税、都市計画税、不動産取得税といった自治体向けの税金を決める基準であったりと。

 

また、所管部署や価額の発表時期や基準日もそれなりに違っていますので、以下のようにまとめてみました。
  1. 実勢価格(時価):実際の売買として契約された価額です。要するにマーケット価格として一番近いものですが、あくまで2者間での合意によって形成されたものなので、必ずしも本当の意味での相場を代表していない可能性もあります。例えば、急いで売りたい、買いたいといった場合にそのあたりで割り引いたり割り増しされたりされている部分が含まれていて、母集団として適切なサンプルになっていないかもしれませんので、こちらだけをもって売買価格を検討するのは控えた方がよいかもしれません。
  2. 公示地価や基準地標準価格(基準地価):所管部署は、国土交通省や都道府県で評価基準は、毎年1月1日と7月1日を基準としその年の3月下旬や9月下旬頃に発表されます。利用目的は通常の売買等の指標となり、不動産鑑定士の方の鑑定評価や収益性なども加味されているようです。利用の主な目的は、通常の土地取引や公共事業用地取得の価格基準ですので、いわゆる取引時価に一番近いと考えられています。ですので、土地を売りたい、買いたいとなった時に一番影響を与える価格となりますので、そういった際にはこちらを参考とするのがよいかもしれません。また、基準地価については、公示地価の補完的役割も担っています。
  3. 相続税評価額(路線価):所管部署は、国税庁で基準日は公示地価と同じの1月1日ですが、発表は公示価格よりも数か月遅れた7月上旬となっています。主な利用目的としては、相続や贈与税の申告の際に財産評価をする際に使われます。我々税理士も一番なじみのあるものです。評価水準は、通常の売買取引に使う公示地価や基準地価よりも低く抑えられており、概ね公示地価の80%となっています。ですので、こちらの数値を使って時価を検討する際には、8割り戻しで行うことを忘れないようにしないといけません。
  4. 固定資産税評価額:市区町村が管轄で、1月1日を基準に3年に一度見直しがされ、3月下旬に評価額が発表されます(次の評価替えは2021年度の予定です)。主な利用目的は、固定資産税や都市計画税、不動産取得税等の課税標準を算出する際の指標となり、評価額は公示価格の70%程度に抑えられています。評価額は、固定資産課税台帳に登録されていますが、一般には公開されておらず、閲覧が可能なのは、土地の所有者、借地人、借家人に限定されています。

価格は個別事情を強く反映するもの

価格は様々な条件を考慮して決定

先のように土地には、用途に応じた様々な価格(評価)が存在しますが、土地は、スーパーで買う食材や日用品、流動性の高いマーケット(市場)が存在する株式や債券などと違い流動性は高くなく、どちらかというと低いといえ、個々の事情によってもその価格が大きく左右されます。

 

つまり、商品として見たときには汎用的なものではなく、ダイヤモンドなどの宝石のように個別性の強い性格の商品です。

 

ダイヤモンドが4C(カット、カラット、カラー、クラリティ)で価格が決まるように、土地も様々な条件をもとに決定されます。
  • 形状(正方形なのか長方形なのか台形なのか等)
  • 道路との接道面積(奥まっているのか通りに面しているのか)
  • 接道面の数(前方だけが接しているのか側面も道路に面しているかなど)
  • 駅からの距離、周囲の環境(スーパーや役所、学校などが近いかなど)
  • 都市計画法における用途地域(低層住宅のみ立てられるのか中高層住宅も可能なのか等)等

 

要件がいくつも絡み合って決まっていきます。

 

ですので、売ったり買ったりする際、財産評価等の際にはは、これらの個別事情と上記4つの価格の整合性を見ながら価格(評価)を考える必要があります。

 

売買の際には、不動産会社の方の意見も一つの意見と考えつつ、周りの意見やその他のデータソースの情報等を考えて整合性を見ていくことが大切ではないかと思います。先日の利益相反の記事に書いたように買いたい若しくは売りたい個人と不動産会社の利益が必ず一致するわけではないので。

情報データベースも参考に

次のサイトは、価格を決定するにあたり一つの物差しにもなりますので参考にするといいかもしれません。自分自身土地購入の際や財産評価の際に使いました。
  • 土地総合情報システム:国土交通省が不動産市場の信頼性・透明性を高め、不動産取引の円滑化、活性化を図るために運営されています。不動産の取引当事者を対象に不動産取引のアンケート調査を実施し、3カ月単位で公表しています。データは四半期ごとに更新され、誰でも無料で見ることができます。
  • 全国地価マップ:一般社団法人資産評価システム研究センターが、国や地方公共団体が一般に公開している土地の価格に関して、収集した情報を公開しています。こちらのサイトを用いると、1. 公示地価(地価公示価格)、2. 相続税路線価

実地調査も一つの参考に

上記のサイトや判断指標を考慮しつつも実地調査も可能なら行うことがよいかと。

 

現地に行かないとわからないものや見えないものが往々にしてあります。例えば、近くにお墓があったり、裏手が崖になっていたりと公開情報だけだとどうしてもわからないこともあります。

 

自分自身も土地を買う際や財産評価の際には現地調査をしっかりし、公開されている情報ソースでは見えないものを確認し、結果的に取捨選択する際の情報を得ることができました。

 

参考までにですが、今後土地を買い家を買われる方は、少なくとも10~20件は比較考量のために土地を見に行くことをお勧めします。

 

数を重ねることでいい点悪い点等の比較すべき点が見えてきますので。

まとめ

今回は、土地の評価の記事から派生して土地に関して色々な視点で考えてみました。

 

土地という商品は、現在の仕事で直接かかわることはありませんが、財産評価等で時折関係しますし、奥が深いモノなので今後も時間を見つけては勉強をしていていきたいと思いました。

【子育て日記】
ちょっと前まで、夕飯後は決まって長男がカードゲームやボードゲームをねだっていましたが、ここ数日そのおねだりがありません。

 

あればあったで、ゆっくりしたいなぁと思いつつないとそれはそれで寂しいものです。

 

少しずつ成長しているのかとも思ってみています。

 

下の子は、お構いなしに本を読んでちょうだーいのポーズでおねだり攻撃(笑)