法人成り時の個人事業主の資産・負債の移動と経理処理

おはようございます。
川越・ふじみ野エリアで活動する公認会計士・税理士の榎本です。
個人で事業を始められ、一定規模になってきましたら、法人成りを選択される事業主の方がいらっしゃいます。

 

法人成りの目安を検討する記事についてこちらを参照法人成りする際の目安となる金額は?

 

今日は、この法人成りに際して、個人事業主を廃業する際の所得計算と法人側での資産負債の受入について簡単に確認いたします。(贈与、現物出資、売買などいくつかの方法がありますが、一般的に行われている売買での処理で以下は説明しております)

個人側での処理

まず、個人事業主の方は、法人成りに際しては、個人事業の廃業手続(税務署に廃業の届け出を提出)をとることになり、資産負債を精算して、所得計算をすることになります。その際に主な資産負債は、以下のように処理することになります。
  • 棚卸資産:法人への引継価格を売上に加算して処理(通常の販売価額の70%以下だと低額譲渡となるので注意(所得税法40条、所得税法基本通達40-2))⇒通常の事業所得で計算
  • 固定資産:市場相場等で譲渡(市場相場が把握困難な場合は簿価も選択肢として考えられます。ただし、時価の1/2以下の低額譲渡の場合は時価での譲渡とされてしまいますので注意(所得税法59条、所得税法施行令169条))⇒譲渡所得として計算(50万円までの特別控除あり
  • 債権債務:簿価のまま引き継ぎ(金融機関からの借入金がある場合は、事前に金融機関と調整するなどの対応が必要)
  • 現預金:残金を個人に返還
上記の処理を行い、個人事業主側は資産負債をゼロとし、損益計算を行います。ただ、固定資産については譲渡所得を別途計算する必要があります。

法人側での処理

法人は、設立時に資本金として入れている現預金を使って個人から上記の諸資産を買い取るかたちになります。資金が不足する場合は、借入(役員若しくは金融機関)での資本調達を追加で行うことになります。
  • 棚卸資産:個人側で計算した譲渡価額をもとに通常の仕入として処理(通常価額の70%以下の低額譲渡の場合は法人側で受贈益が計上されてしまいますので、譲渡価額については注意が必要)
  • 固定資産:中古の固定資産の購入として処理(耐用年数は、中古資産の耐用年数で見積もる。低額(時価の1/2以下)での譲渡の場合は、法人側で受贈益が計上されてしまいますので、譲渡価額には注意が必要)
  • 債権債務:簿価で受入
以上の条件のもと、個人との間での売買契約になるので、形式上も売買契約書などの作成をしておくと、事後的に当該処理を検証した際の客観性が高まります。

まとめ

個人から法人なりする際には、法人の設立手続き、資産負債の移動、それに伴う会計処理と色々と手続きが煩雑です。漏れや不足などが生じないように、一つ一つ順序立てて進めていき、課税上(特に売買の金額)も問題とならないように対処することが大切です。

【子育て日記】
長男が昨日の朝ご飯の時、妹が静かだねと、一言。普段は、食事中妹のくれくれの要求が強いので、そう見えたのかもしれません。