若手公認会計士はAIの登場にそれほど脅威を感じていないという新聞記事を見て
おはようございます。
川越・ふじみ野・富士見・三芳エリアで活動する公認会計士・税理士の榎本です。
先日新聞の記事で30歳未満の若手公認会計士の多くは、AIの登場にそれほど脅威を感じていないという記事を目にしました。自分自身現場で業務を行っている身としてどうか改めて考えてみました。
AIに置き換わるといわれる会計士の仕事
会計監査とAIの代替可能性
AIに置き換わってしまうといわれる公認会計士業務の代表格として会計監査が挙げられています。
会計監査は、ルーティン業務と呼ばれる業務も一定割合あるため、そのような部分がAIによって効率化・自動化されていくと会計士業務が将来的になくなるという見解になっているのかもしれません。
ちなみに、会計監査の仕事は、一般的に知られていないので、実際どのような仕事かざっくりですが見てみますと、
- クライアントが作成した会計帳簿について根拠となる証憑とチェックし確認する仕事
- 会計帳簿の作成が適切な手続き手続を経て作成しているかを担当者や上位の管理者にヒアリングなどを行い、実際の書類をもとに確認する仕事(いわゆる内部統制の検証)
- クライアントのトップや部門幹部、監査役などとコミュニケーションを行い、会社の全体的な方向性や考え方を確認する仕事
- 工場や支店、海外拠点がある場合は、そういった場所も訪問し、残高検証や内部統制の検証をする仕事
- 残高検証の結果の最終成果物である有価証券報告書等の外部に公表する書類に書くべきものが書かれているか確認する仕事(開示監査)
- その他クライアントからの会計基準の適用や会計処理の確認などの種々の質問への対応をする仕事
といったお仕事があります。
以上のように、会計監査においては、ルーティンで行う仕事もあれば、人の判断や監査チームでの検討、ミーティング、クライアントからの意見聴取といった人と人とのコミュニケーションの積み上げをもって最終的に判断をする仕事もそれなりにあります。
それに、監査の現場では、往々にしてあることですが、会社を取り巻く状況が変わったことで、会計上の判断も変わるなど、その都度適切な判断を求められるというのがよくあります。
このような変化に応じた判断が求められる仕事については、AIがいくら進化しても簡単に置き換えることは難しいのではないかと個人的には思います。
AIを積んだロボットが通常の社会で働くといった20年ほど前に公開された映画「マトリックス」のような世界が出てきたら別でしょうが、それはまだ先か、もしくは人間がそれをウェルカムとしないかもしれませんので、可能性は低いのではないかと思います。
ただ、あの映画では人間が知らないうちにロボットに支配されているという設定だったので、もしかすると人間がどうこうできることではないのかもしれませんが…
会計監査におけるルーティン業務
会計監査についてもう少し触れますと、ルーティン業務がいくつかあると書きましたが、その中の代表格に残高確認の際の証憑類とのチェックや会社の手続が正確かどうかを検証する際の証拠書類との突き合わせなどがあります。
これらは、比較的判断の余地が入り込みにくいものなので、AIに一括で処理させることができるかもしれません。
一方で、会計監査の場合は、税理士業務のように汎用的なソフトを使って行う仕事が少なく、クライアントからの資料を利用して行う業務がほとんどなので、エクセル等のデータでもらえるものは、AIも処理ができそうですが、そうでないものについては、クライアントごとに記述や表現が異なるものもあり、AIがそこのあたりをうまくさばいて仕事を行えるかどうかは、個人的に疑問が残ります。
そういったこともあるので、一定数AIに置き換わる仕事があるかもしれませんが、税理士業務に比べるとその割合が少ないことから、30歳代未満の若手の会計士の方もそれほどAIの進化に脅威を感じていないのかと思いました。
AIには最終的に置き換えることが難しい会計士の仕事
他方、AIが進化しても、AIでは決して置き換われない仕事がいくつかあります。
そのうちの一つに監査証明に対する署名と監査責任を負うといった行為。これは、法律が変わらない限りAIロボットが署名するわけにもいきませんし、ひとたび不祥事が発覚した時に投資家に対しての説明責任を負うことは、AIロボットにはできないと思います。
この辺りは、自動運転の車が事故を起こした際にだれが責任を負うのかの議論と似ているところはあります。自動運転車の事故の場合は、責任を負うのがメーカーなのか、ドライバーなのかといったあたりが議論されていますが。
監査証明は、最終的に監査チームの代表者が行う業務ですが、それ以外にも監査チームには、マネージャーや主査、スタッフの方がおり、各自クライアントやチームと議論することもあれば、会計基準、法令、過去のデータといった様々なデータをもとに監査証拠と呼ばれるものを積み上げ、各自が調書にしていく過程は、AIに簡単に置き換わる業務としては考えにくいかと思います。
よっぽど高性能で、色々なロジックを構築できるAIロボットが登場すれば別ですが。
また、会計士の仕事には、監査以外にもM&Aにおけるデューデリジェンスといった買収監査、内部統制構築支援、内部監査支援、IPO支援、経営コンサル、地方自治体向けの包括外部監査など個別案件として進める業務もあります。
これらは、人と人とがコミュニケーションをとりながら進めていくことが中心の仕事ですので、このような人を介した仕事は、AIによって置き換えられることは考えにくいかと思います。
まとめ
会計士の仕事は、会計監査だけではないので、今後は様々な経験を積んでいることがマーケットにおいて会計士としての価値を高めていくかと思いいます。
AIが侵入しない領域やAIと対立しない業務についてサービス提供が可能となるよう、自分自身、多様な選択肢を持てるよう、幅広い業務に関与する形で働き、税理士業務と会計士業務のバランスをとっていければいいかなと思っています。
【子育て日記】
昨日は、YAOKOで肉まんが10%引きだったので、子供たちが喜ぶだろうと買って帰ると、二人とも今年最初の肉まんにニンマリ。
妹は、自分が少し少なめなのに不満なのか食べ終わってからは、兄が大事そうに食べている肉まんを恨めしそうに眺めていました😥