分掌変更に伴う役員退職金支給の留意点

おはようございます。
川越・ふじみ野エリアで活動する公認会計士・税理士の榎本です。
先日役員退職金支給に関しての留意点についてまとめましたが、今日はその派生論点としてよく議論になります分掌変更に伴う役員退職金についての留意点をアウトプットして整理してみます。

分掌変更に伴う役員退職金

先日まとめました役員退職金の支給は、完全に退職して経営にも関与しない場合を想定したものですが、世の中には、代表取締役の職は譲るが顧問や相談役、非常勤取締役、監査役等、完全には身を引かず「隠居」に近い形で会社運営にかかわる場合もあります。

 

日本の上場会社でも顧問や相談役がいつまでも経営にかかわる慣習は、海外の投資家から経営に不健全な影響を与えるということで、良い印象を持たれていないようです。これは、日本的な風習として、年長者の意見を尊重せよといった意識がどこかにあることが影響しているのかもしれません。

 

上場会社にかかわらず、中小企業でも、同様のことはあります。実際、先のような役職に就いたタイミングで一旦は、会社経営の中心から身を引いた、すなわち実質的には退職に近い考えられるので、役員退職金を支給する場合があります。
ただ、この場合は、いくつか留意しておかないと税務調査で指摘を受けることがありますので、その点を以下にまとめました。

支給に際しての留意点

分掌変更が認められる場合

以下の場合の分掌変更であれば、実質的な退任として役員退職金を支給することが考えられます(法基通9-2-32)。
  1. 非常勤役員になった場合:よく言われる非常勤取締役などが例として考えられますが、この場合の注意点としては、実質的にも形式的(名目上)も代表権を持たないこと。非常勤なのに、日々現場に出て指揮をとっていたり、融資交渉や契約交渉の前面に出るなど対外的にみてもこの人が会社の代表と認識されるような行動をとっている場合は、非常勤として認められません。
  2. 監査役になった場合:監査役は一般的に経営を監督する立場であり、経営を執行する立場ではないので、監査役への役職変更は取締役の職を退任したと認められますが、この場合も1と同様、実質的に経営に関与していない点及び主要株主としての地位にないことが重要となります。
  3. 分掌後の給与が50%以上引き下げられた場合:こちらは、役職名については言及されていませんが、例えば、相談役や顧問といった役に付くにあたり、直前の給与の半分以下となるなど、金銭的面から言って経営者としての蓋然性がないという状況になる場合を想定しています。ただ、この場合でも、1で書いたように、経営を実質的に指揮していないことは併せて考える必要があります。

 未払金はNG

分掌変更の場合の役員退職金については、前回の記事のように未払金の計上は認められていません。趣旨としては、前回の記事に書きました利益調整の排除をより強く意識する必要があるということが背景にあるためです。実際にこの点が争点となった裁判事例もあり、その後、未払金に関する記載が通達にも明記されるようになりました。

まとめ

役員の分掌変更による退職金の支給は、現実的に起こりえますが、先に書いた「経営上の重要な地位についていない」ことが処理をする上でのエッセンスになりますので、そこだけは留意する必要があります。逆に、その点をしっかり意識さえすれば(当然未払ではなく支払うことを前提として)、分掌変更による役員退職金の支給も現実的には行えるかと個人的には思います。


【子育て日記】
長男がクライミングでベルトをとってきました。今年の冬に続き2回目。2歳児クラスから始めた保育園内のクライミングですが、しっかりとした成長を感じます。下の子も来年くらいには、少しずつ始められるかな?という感じです。こちらも楽しみです。