内部留保への課税と資本金1億円の基準について考える
おはようございます。
川越・ふじみ野・三芳・富士見エリアで活動する公認会計士・税理士の榎本です。
内部留保への特別課税が免除となる会社
先日、日経新聞社会面でこんな記事を見つけました。
「内部留保への課税、体力ある中小企業が免除に」
この記事では、オーナー企業(日本の中小企業のほとんどすべてがこの形態)に対し、沢山利益をため込んでいる会社で一定規模以上の会社には特別な税金(留保金課税という税金)をかけますよということが書かれていました。
その中で、個人的に気になったのがその特別な税金の対象が資本金1億円超の会社(一部例外あり)が基準となっているため、現実には資本金1億円以下でも、税金が課せられる1億円超の会社以上に財務体質がしっかりしているところが400社もあったというのが国の検査で分かったようです。
この記事にかかわらず、現行の税制では、中小規模の法人とそれ以外の大規模法人を分ける基準として資本金1億円というものが度々登場します。
確かに、会社法改正前の旧商法で株式会社を設立するには、最低資本金を1,000万円とするなど、資本金の金額に会社の安全性や信頼性を置いていたため、税制もそのあたりを考え、資本金を一つの基準としているのかもしれません。
一方で、先ほど記事に出てきた話では、資本金1億円以下を対象外としているのは、資金調達の面など財務的基盤を配慮したことによるものとされていますが、監査や税務業務を通じて様々な会社を見てきた経験からすると、資本金だけで財務の安定性を図るのは実態と合っていないのではないかと感じます。
むしろ、会社の財務面の安定性、信頼性の判断は、資本金だけではなく、現預金、純資産、自己資本比率等貸借対照表の借方と貸方のバランスを見て、会社が税金を含めた支払い能力を判断すべきではないかと考えます。
資本金基準だけで考えると
例えば、次のような例では、どちらが支払能力があるか考えてみます。
A社(借入金はなし)
現預金 | 3億円 | 負債 | 1億円 |
その他流動資産 | 1億円 | 資本金 | 0.1億円 |
固定資産 | 1億円 | 利益剰余金 | 3.9億円 |
合計 | 5億円 | 合計 | 5億円 |
B社(負債のうち借入金2億円)
現預金 | 0.5億円 | 負債 | 3億円 |
その他流動資産 | 1億円 | 資本金 | 1.5億円 |
固定資産 | 3.5億円 | 利益剰余金 | 0.5億円 |
合計 | 5億円 | 合計 | 5億円 |
A社は、資本金だけを見ますとB社の15分の1ですが、貯めた利益や現預金を比較しますと、B社よりも自己資本比率や現預金の残高、純資産の金額でどれも上回っています。
ただ、先ほど特別な税金が課されてしまう基準が資本金を基準に判断されますので、B社は、資本金基準を満たさないため対象外という形になります。
必要以上に会社の内部留保をしている会社から、一定程度野徴税を行うという制度の趣旨からすると本来的にはB社から徴収する方があっているのかもしれませんが、制度の安定性等を考慮するとひとまず資本金基準も有効というのがい現行の政策上の判断のようです。
個人的には、会社法などの改正で会社の規模や形態に自由度も出てきたり、資本金だけが会社の信頼度を測る尺度ではない時代背景を考えると、もう少し実態に合った基準に見直すべきではないと思いました。
現に400社モノ会社が制度の網から漏れている状況を考えますと、無視していいほど僅少ではないかなと感じます。
まとめ
何かを決める基準は、時代背景や経済の状況に応じて、時々刻々と変わり、当時有効であったものでも時間が立つと、効果の薄れるモノも少なくありません。今回の特別な課税基準もそうしたものの一つかと思います。
現に400社近くが法の趣旨から漏れているのであれば、そうした会社も網羅できるような基準、例えば、資本金が基準以下でも純資産の比率や現預金の絶対値等を合わせて複合的に判断する基準の整備も必要ではないでしょうか。
今後の税制改正では、今回の調査の結果などを踏まえた改正の見直しを行い、法の趣旨にあった基準が整備されることが望まれます。
【子育て日記】
長男は、先月の誕生日プレゼントで念願のSwitchを手に入れてからは、毎日決まった時間で楽しむため、自分の身の回りのことをテキパキとやるようになりました。
ただ、想定以上に早く片付いてしまい、一緒にやる親側がまだ準備できていない時に「あとオレ何すればいい?」とやや指示待ち思考の発言になってしまうのが少し気になります。時間の管理って難しいなと改めて思いました。
下の子は、先日運動会が保育園で開催され、最年長クラスの親以外は出席できませんでしたが、園長先生が当日の様子をブルーレイディスクに焼いてくれるようなので、楽しみにしております。