請負工事と常傭工事

おはようございます。

 

川越・ふじみ野・富士見・三芳エリアで活動する公認会計士・税理士の榎本です。

 

会計士・税理士として仕事をしていますと、様々な業種の会計処理に触れますが、それぞれ業界独特の呼び名や業界独特の処理・考え方があります。

 

自分は、建設業や製造業などのモノづくりの会社に監査法人、事業会社経理、会計事務所、独立後と長く関与してきましたが、その中の一つに建設業の「請負工事」と「常傭工事」の会計処理があります。

 

今日は、各工事の違いとその違いが及ぼす会計処理について整理してみます。

請負工事と常傭工事

請負工事は、請負契約に基づいて、工事期間や工事の対象範囲(成果物)、金額、納期、検収基準などが定められ、契約で定めたモノを提供できて初めて代金を頂ける工事です。

 

対象となる工事としては比較的大きなものが多く、期間も長いものが一般的で、金額もある程度決めた中で行いますので、受注者側も金額がある程度見積もれますので、予算の策定や将来予測がしやすい面もあります。

 

ただ、工事が長期間になる場合は、不測の事態の生じる可能性もあるので、その辺りは場合によっては赤字の発生であったり、工期変更、金額変更といったことが生じることもあります。

 

一方常傭工事の「傭」という感じが「傭兵」の傭に由来するように人工をベースとして、一日・一人いくらといった形で現場作業に従事した人工を基礎として支払われることが多いです。

 

この場合、よく問題となるのが常傭単価の決め方で、単価の中には、社会保険料負担もしっかり含まれているのかどうかといった点ですが、受注した方が従業員を雇っている場合には、社会保険料の負担が発生することもあるので、そうした場合は、原則として常傭単価にその金額を入れてもらう必要があります。

 

しかし、業界の慣習や従前からの両者の関係でフルカバーされないといったことも中にはあるようなので、そのあたりは事業者の方と話していると厳しいお話も時折耳にします。

各工事と経理処理-売上計上

経理処理の違いとしていくつか大きな違いがありますが、まず代表的なものとして売上計上があります。

 

請負工事の場合は、先ほど書いたように長期のモノが多いので、受注者にとって完成時の売上代金の回収までの資金繰りが厳しくなることもあるので、そうした資金繰りの面を考慮し、発注者より売上代金の一部を前受金で受領していることもあります。そのような場合は貸借対照表に「前受金」もしくは「未成工事受入金」といった科目が計上されます。

 

しかし、請負工事の場合は、事前に代金の一部をもらう場合でも、成果物が完成していない場合は、工事発注者に対しての売上計上はされません。

 

最終的な売上計上の時期は、成果物が完成し、お客様に完成納品した時期となりますので、決算時点で未完成の工事ばある場合は、未完成の工事として処理することになります。また、工事の完成時期によっては、売上の計上が特定の時期に偏ってしまうこともあるので、年度で見たときの売上に凸凹が生じることもあります。

 

一方、常傭工事の場合は、先ほど書いたように、人工ベースで計算することになりますので、通常は、ひと月あたり、何人工提供したとして売上の請求を発注者に対してすることになります。

 

この場合のイメージとしては、ある作業(クレーン作業、鳶、土木、鉄筋組み、ダンプ搬送、型枠制作等)を一定時間提供したので、お金をもらうといった感じなので、工事といってもどちらかというとサービス業の計算イメージに近いかもしれません。

 

このため、請負工事のように、売上代金回収が長期にわたることはなく、通常は月締めで翌月に精算することになるので、売上の計上もフラットになりやすいです。

各工事と経理処理―未成工事

売上計上のところでも触れましたが、請負工事の場合は、長期にわたるものも多いため、決算期末時点で未成工事のモノが出てくることがあります。その場合は、必ず未成工事分に関係する経費(外注費、材料費、消耗品費等)ついては貸借対照表に資産として計上し、工事が完成するまで繰越をする処理が必要になります。

 

建設関係のお仕事をされるお客様とお話しするときに、経理経験のある方はこの辺りもご理解されているのですが、通常はこの視点を見落としがちの事業者の方が多いです。

 

これは、税金計算にも当然影響がありますが、損益計算を正しく行い、もうかっているのかそうでないのかを期間ごとに見る際にも大事になりますので、自分はお客様に決算が近づくと必ずこの点は確認し、早めに抑えるようにします。

 

一方、常傭工事の場合は、先ほど書いたように、人工ベースで請求し、月毎に精算するので、通常は未成工事で繰り越すといったものは出てきません。

 

ただ、中には、請負契約で契約の予定でも、金額が未確定のまま工事が始まり、代金の回収を必要な場合に、暫定措置として常傭工事のような形で代金の一部をもらうといった例外的な事象もあります。

 

そうした場合は、最終的な契約が請負契約となるのであれば、決算時点で未成の場合は、代金は前受金、発生した費用(外注費など)は、未成工事として繰り越す必要が出てくると考えられます。これは、売上計上が最終的に請負契約に基づいて一括計上されることになるからです。

まとめ

今回は、建設業の方とお話しているとよく出てくる請負工事と常傭工事について主な経理処理についてまとめてみました。

 

業界の方にとっては、よく使う用語ですが、そうでない方にとっては、なかなか理解しにくいところもあると思います。今後も自分が関与している業界特有の会計処理と考え方について自分の考えを整理しながらまとめていきたいと思います。

【子育て日記】
下の子は、成長のあかしか何でも自分でやりたがります。ただ、「自分で」と言えず、「ジンブ」、「ジンブ」と言ってしまいます。妻も自分も彼女のことをジンブさんといってしまいます。かわいいものです。

 

兄が同時分も同じように自分でやりたがりましたが、当時は、彼はしっかり自分と言えてたと記憶しています。