経営状況が悪化した場合は、役員報酬減額という経営判断
おはようございます。
川越・ふじみ野・富士見・三芳エリアで活動する公認会計士・税理士の榎本です。
今回のような新型コロナウィルスによる外出自粛や休業要請で売上が大きく減ってしまった場合は、入ってくるお金は減ってしまいます。
しかし、出ていくお金は、ある程度減りますが、一定程度固定的な支出は残り、その結果、資金繰りが苦しくなることが往々にしてあります。
このように経営的に苦しくなった会社では、出ていくお金を少しでも減らすため、固定費等の経費削減による資金繰りの改善をする必要があります。
目次
固定費削減の一つに役員報酬の減額
固定費には、人件費、通信費、水道光熱費、家賃などいくつかありますが、今回は、固定費削減の一つとして、役員報酬の減額を考えてみます。
もちろん、役員報酬以外にも削減できる経費は削減すべきですが、万が一、今回のコロナウィルスの影響がひどく赤字が見込まれるなら、役員報酬の引下げは最優先事項です。
なぜなら、役員報酬が高ければそれだけ所得税や社会保険料など、会社の売上の減少と関係のない税金がより多くとられてしまうからです。
ただ、以前書いた記事では、役員報酬は原則的には毎月定額で、変更可能なのは定時の株主総会のタイミングと書きましたので、変更は可能なのかという疑問もあります。
ですが、原則があれば必ず例外があり、その例外の一つに、今回のような異常事態による「経営状況の悪化」を受けた臨時的な引き下げが挙げられます。
この場合は、引き下げ後が定期同額であれば、引下げ前と引き下げ後のそれぞれが定期同額という形でみることになり、税務上認められることになります。
この「経営状況の悪化」には、主に2つの状況が想定されます。一つ目は、観光業や飲食業等、早々に売上の減少が起き、経営状況の悪化が「顕在化」している場合です。
二つ目は、自社は現在のところ直接の影響はないものの、取引先や消費者等がその先で新型コロナウィルスの影響を受け、業績の悪化や景気の悪化が顕在化し、その影響が近い将来、自社に影響を及ぼす「潜在的な状況」です。
顕在化している場合(現時点で経営状況悪化が表面化している)
既に売上の実績が予想や想定を大幅に下回り、現在の状況では営業の継続などが難しい場合だけではなく、今後そういったことが想定されるので、先んじて銀行からの一時的な融資や株主からの資金調達、取引先との間での決済条件の変更を必要とすることがあります。
その場合も、対外的な説明をする上で役員報酬などの削減を求められことがあり、こうした状況も役員報酬の減額をする一つの理由となると考えられます。
これらを簡単にまとめますと以下の通りです。
- 業績悪化による役員としての責任を株主から求められた場合
- 銀行などとのリスケや融資条件を決定する際に求められる場合
- 取引先から信用不安改善のための計画として役員報酬の減額を求められる場合
潜在的な悪化の場合(現時点では経営状況悪化が表面化していない)
経営状況の悪化は、先に書いたようにすぐに顕在化する場合もあれば、回りまわって時間差で影響が出てくるものもあります。
例えば、食品卸の会社を例に考えますと、納入先に飲食店が多い場合は、今回のように飲食店が臨時休業や営業時間短縮で従来よりも取引量を絞ることがあります。
そうした場合、問屋として抱えている在庫がさばけなくなる可能性が出てくることが想定されますし、そのような場合は在庫に資金が眠るため、資金繰りが徐々に悪くなり、その影響が数か月後に出てくる場合などが考えられます。
このように、現時点では、顕在化はしていなくても将来的に経営状況の悪化が考えられる潜在的な状況においても、経営上の判断として早いうちに役員報酬の引き下げを固定費削減策の一つとして行うことがあります。
ただ、注意点としては、それらの判断が客観的に説明できるように、判断根拠を資料として残すことは必要となります。
要するに、単に将来悪くなりそうという経営者の思い込みや推測だけで行う場合は、認められない可能性がある点に留意する必要があります。
役員報酬を減額したら社会保険の変更届(随時変更)も忘れずに
先に述べたいずれの要件に合致し、役員報酬を引き下げるに至った場合、忘れてはならないのが、社会保険料の月額変更届の提出です。社会保険料は、報酬の月額を基準に決まっておりますので、その基準額が変われば当然社会保険料も変わります。
今回の場合で言えば、報酬が減るので社会保険料の金額も減らす必要があります。
もし、提出を忘れてしまうと、払う必要のないコストを会社が負担し続けてしまうので、資金繰り改善の視点からするとNGです。
では、提出のタイミングはいつかといいますと、変更した月を含んだ3か月間の据え置き期間(変更後の金額で役員報酬が支払われているかを確認する期間)が経過した翌月となります。
例えば、4月の支給額から変更する決定を臨時株主総会で決めた場合は、4,5,6月が変更後の金額ということを確認して、7月に届け出を提出し、7月に変更となります。
そして、8月の給与から変更後の社会保険料となります(社会保険の徴収は、通常1か月前の給与について翌月徴収するので)。
そのため、実務上は、この改定がされる前までは、役員報酬は減っても社会保険料は、改定前の金額で徴収する形になります。
まとめ
今回は、経営が悪化した際の固定費削減策の一つとして役員報酬減額について紹介しました。
役員報酬は、原則定額というきまりがありますが、今回紹介したような経営状況悪化等の要因が伴いますと、例外的に引き下げられることもありますので、状況によっては経営判断の一つとして使うことも考えられます。
【子育て日記】
下の子は、最近3語文までしゃべられるようになったので、自分の状況も少しずつ伝えてくれます。先日も、「指いたい」と中指から黴菌が入ったのか腫れている状況を伝えてくれましたので、病院に直行し、診てもらいました。
長男は、学童に長くいたい時があるのかせっかく早く迎えに行けたときも「もう少しゆっくり来るように」とぼやき。学童が楽しくていいことですが、親としてはちょっと寂しいところ