財産を贈与したからといって必ずしも贈与税で処理するとは限らない
おはようございます。
川越・ふじみ野・富士見・三芳エリアで活動する公認会計士・税理士の榎本です。
一般的には、モノ(資産)を上げたりすると贈与という認識になり、税金も贈与税になると思われる方が多いと思いますが、税務の世界はそんなに単純ではありません。
そのあたりを今日は掘り下げてみます(今回は、低額譲受にあたるみなし贈与は一旦割愛いたします)。
贈与だからといって贈与税とは限らない
そもそも「贈与」というのは、民法549条で以下のように定義されています。
贈与は、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。
民法上は、上記の文章を見る限り登場人物が法人か自然人(個人)かを特定しておらず、「当事者間の双方合意」と「無償」ということがキーワードを満たせば贈与ということになります。
一方、税法ではそうではなく「贈与税」の適用対象はしっかり限定されており、贈与税が適用となるのは「個人間の贈与」に限られています。
この場合、税金を納めるのは財産をもらった方の個人だけで、上げた方の個人側は基本的には課税されません(基本的と書いたのは、みなし贈与の場合は、上げた方にも課税されることがあるからです。
つまり、贈与者(モノを上げる方)若しくは受贈者(モノをもらう方)の一方でも法人が関与する場合は、贈与税の適用になりません。
この辺りの理解があいまいですと、個人と法人の間で資産の異動をした際に、適用すべき税法を誤ってしまうことになります。
例えば、会社所有の個人(役員)が自社の財産を会社に無償で贈与した場合は、贈与税の適用はなく、個人(役員)側では譲渡所得が発生するので、所得税、法人側では法人税の規定に従って処理を検討することになります。
法人と個人の間での無償の資産の提供は贈与税ではない
贈与者が個人-受贈者法人
財産を上げる方が個人で財産をもらう方が法人である場合には、次のように整理することになります。
財産を上げる方の個人は、モノを上げているので贈与税かと思いがちですが、実務においては所得税で処理することになります。
この場合の考え方としては、法人への無償の贈与は、時価をもって引き渡したと考えるのが税務の考えだからです(所得税法59条1項1号)。
実際無償で渡しているので、対価を得ていないのに税金だけがが課されてしまうことになりますので注意が必要です。
一方法人においては、資産が増加しますので、無償の資産の譲り受けということで贈与された事業年度の益金(収益)として処理することになります(法人税法22条2項)。
また、この場合、法人の資産が増加することで、既存株主の持ち分もそれに伴って増加しますので、同族会社の場合は、株主持ち分が増加した既存株主においては、資産を提供した人からの贈与があったとして贈与税の課税もされてしまいますので、注意が必要です(相続税法基本通達9-2)。
贈与者法人-受贈者個人
今度は、上記と逆の場合を考えてみます。
まず法人においては、無償で個人に法人の資産を提供した場合、相手方が役員である場合には、役員賞与として認定され、役員給与の損金不算入規定(法人税法34条)等にあたり、そのまま損金算入処理ができないことがありますので、取引の実行には注意が必要です。
一方個人においては、この場合も贈与税での処理ではありません。
このことについては、相続税法21条の3第1項で法人からの贈与について取得した財産は贈与税の非課税財産として書かれているからです。
では、どうするかというと、この場合も実務上は所得税で処理することになり、受贈者が法人の役員の場合は、給与所得、それ以外の場合は一時所得という形で整理します。
なお、贈与者及び受贈者が法人の場合は、個人が関係しないため、法人税法の中で処理されるため、今回は詳細を割愛いたします。
まとめ
資産の贈与=贈与税として処理するのは、あくまで個人間のやり取りに限るということを今回は確認いたしました。
法人の役員の方は、自社の資産を法人に提供したり、逆に法人の資産を一部無償で譲り受けるなどの取引を時として行うことがありますが、その場合は、贈与税ではなく所得税や法人税等で処理していくことになるということをこの記事をご覧になった方はご理解いただければと思います。
【子育て日記】
先日は、保育園のお誕生日会がありました。長男は保育園最後のお誕生日会でしたので、妻と見に行きました。
本人も名前を呼ばれると元気よく返事をしており、普段の園での様子が少し垣間見えたので、大変いい経験になりました。
下の子は、先生にだっこされ、お兄ちゃんのお祝いを遠くから見守っていました👶