役員退職金を支給するにあたっての留意点

おはようございます。
川越・ふじみ野エリアで活動する公認会計士・税理士の榎本です。
2025年には、中小企業の大廃業時代が来ると世間で言われています。跡継ぎが見つかりうまくバトンタッチできている会社、そうではない会社と色々ありますが、いずれの会社でも社長をはじめとした役員が高齢で退任する機会が増えています。その中で、退任する役員には、役員退職金を支給することになると思いますが、支給にあたっての注意点について、今日はアウトプットして整理してみます。

役員退職金の支給金額について

役員退職金は、上場会社やある程度組織がしっかりした会社でしたら、役員退職金に関する規程がありますので、それに従った内容で計算し、株主総会の決議にかけるのが一般的な方法です。

 

しかし、非上場の会社で比較的規模の小さい会社の場合(日本の会社のほとんどはこちらになります)は、そのような内規といったものがない場合が多いので、支給の決定に恣意性が入りやすいのが現実です。そのため、税務調査においても支給の決定過程や支給内容、支給金額等が論点になりやすいので、ある程度客観的な根拠に基づいて決定し、それを証拠として残しておくことが重要となってきます。

 

よく使われるのが、貢献度に応じた倍率を用いる方法です(法人税法の基本通達9-2-27の2でもその点が明文化されています)
役員退職金=退任時の報酬月額×在位年数×功績倍率
この決定方法では、報酬月額や在位年数は、客観的な数字としてあるので、議論の余地はありません。大事なのは、上記式の3つ目にある功績倍率をいくらにするかということです。この点は、過去の裁判で様々な判決が出されており、絶対的な数値というものは示せませんが、一例を示しますと以下のモノが挙げられます。
  • 昭和55年の東京地裁の判決では、社長の功績倍率を3倍とした判決
  • 平成29年の東京地裁の判決では代表取締役の功績倍率を4.89倍とした判決
このように、時代や会社の業種などによってもかなり幅がありますので、絶対安全な基準はいくらかということを考えるのは難しいので、個人的には、横と縦の軸を意識して、客観的な説明資料を作ることが大切かと思います。

 

横の軸は、他の業種や地域毎の平均値等で見てどうか。縦の軸は、過去の実績や過去の裁判例との比較等時間軸を中心に見てどうか。
このようにいくつかの視点で検討した根拠過程を明示しておくことで、人に説明しやすくもなりますし、聞く方もそれによって印象も変わってきます。その結果として、税務調査の際に争点にならないように事前に準備ができるのではないかと思います。

役員退職金の損金算入時期と未払役員退職金の支給時期

以上の方法で決めた役員退職金については、異常に高額でなければ、原則損金になります。その損金の参入時期については、以下の通りです。
  • 【原則】
株主総会の決議をした事業年度
  • 【例外】
支払い事業年度に損金処理をした場合はその事業年度

 

ここで、一つ注意したいのが、未払の役員退職金です。長期にわたる未払の役員退職金は、見方によっては利益調整を目的としたものとして考えられ、税務調査の際に指摘事項として言われる可能性があるので、一定期間内に支払うことが求められています。

 

ただ、役員の退職金は相対的に金額が大きくなるため、その時に資金があれば問題ないですが、必ずしも満額を用意できていない場合があります。無理して支払い、本業に影響が出てしまっては元も子もないので、未払として処理することが実際にはあります。

 

そこで、この未払の退職金については、支給決議後3年以内に支払うことが目安としてされています。これは相続税法の規定で死亡後3年以内に支給が確定したものが対象となるということとのバランスからと考えられます。

まとめ

役員退職金は、長年事業や会社の発展に貢献された役員の方への慰労の意味も込めて支払うことが多いですが、一方で支給の金額が多額になりやすく、恣意性が入りやすい部分も現実的にはあり、税務調査の際にも論点になりやすいところですので、支給の際には、先に述べた金額決定や支払の時期等を意識して行っていく必要があります。

【子育て日記】
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