消費税の免税期間の落とし穴

おはようございます。
川越・ふじみ野・富士見・三芳エリアで活動する公認会計士・税理士の榎本です。

 

消費税は、事業開始や法人の新規設立から一定期間免税になるというのは、ご存知の方もいらっしゃると思いますが、中には稀にこのメリットを享受できない場合があります。今日はそのあたりについて整理してみます。

消費税の納税義務者と免税

消費税は、よく売上が1,000万円を超えると課税されるといいますが、1,000万円を超えたからすぐに納税しなければいけないというわけではなく、あくまで、将来税金を納める義務が生じるというのが正しい理解です。

 

もう少し詳しく書きますと、この1,000万円というのは、「基準期間」における課税売上をさしており、「基準期間」というのは現在の事業年度から遡って2期前のモノになりますので、将来税金を納める必要があるという考え方になります。

 

例えば、2019年4月~2020年3月が事業年度の会社ですと、この基準期間は2017年4月~2018年3月となります。

 

こうした考え方が前提にあるので、新規の会社では、過去(基準期間)が存在しないため、一定期間税金を納めることがないということになるのです。ただ、この後に書きますいくつかの場合には、そのメリットが短くなる若しくはなくなるといったことが生じますので、注意が必要です。

免税にならない場合

消費税が一定期間(2事業年度)免税とならない場合の主なものとして①資本金又は出資の額が1,000万円以上である場合②特定期間の課税売上及び給与等の金額が1,000万円を超える場合③特定新規設立法人に該当する場合が考えられます。

新設法人で資本金等が1,000万円以上

設立時の資本金や出資の額は、基本的に自由に決められますが、業種(人材派遣等)によっては許認可等の関係で資本金が1,000万円以上必要な場合があります。

 

このような場合は、設立初年度から消費税の課税事業者とならざるを得ません。

 

ただ、この場合でも最初の2年間は、資本金の額で消費税の納税が判断されますが、その後3年目からは基準期間の課税売上によって納税義務を判定することになります。

 

ですので、仮に1年目の課税売上が1,000万円を下回る場合には、3年目は納税義務者とはなりません(ちなみに設立年度の事業期間が12か月に満たない場合は12か月に割戻して計算)。

特定期間の特例

特定期間における課税売上及び給与等の支払いが1,000万円を超える場合は、設立初年度は免税ですが、2年目から納税義務者となってしまいます。

 

ここで、特定期間とは、前事業年度の開始後6か月間の期間を言います。

 

また、課税売上と給与支払い等の判定で「及び」と書いてあるのは、「又は」の場合は適用がないので、仮に課税売上が1,000万円を超えていても給与等の支払いが1,000万円以下でしたら、2年目は消費税が課税されません。

 

特定期間の特例の考え方は、個人と法人で少し異なりますので別々に解説いたします。

個人事業者の場合

個人事業者の場合は、1月1日から6月30日までが特定期間となっており、この期間の課税売上及び給与等の支払いが1,000万円を超える場合は、消費税の課税事業者となります。

 

例えば、事業を行っていない個人の方が3月1日に開業した場合には、3月1日から6月30日までの期間で、課税売上高と給与等支払額を判定します。



なお、7月1日から12月31日までの間に開業した場合には、特定期間がないため、2年目は免税事業者となります。

法人の場合

法人は、設立事業年度の事業期間が7か月以下の場合は、特定期間の課税売上や給与等の支払いがあっても判定が不要となるので、課税事業にはなりません。

 

あくまで判定の対象になるのは、設立事業年度が7か月超(月中の設立を含む。例えば、3月16日設立で期末日が10月31日の場合等)の場合に、事業開始の6か月間の期間で課税売上や給与支払い等の金額の判定を行います。

 

先ほど書いた3月16日のような月中の設立の場合は、最初の6か月は、9月16日ではなく、その前の月の月末である8月31日となります。

特定新規設立法人

こちらの場合は、課税売上の金額や資本金の金額ではなく、特定の法人や個人に支配される場合に消費税が課税されてしまうという制度です。この制度は、大規模な会社が子会社などを使っての消費税の納税義務を免除されることを防止するために作られました。

 

この制度においては、以下のいずれの要件にも該当する場合は、消費税が設立初年度から課税されてしまいます。
  • 特定の人または会社に株式などが50%超(直接もしくは間接的に)持たれている場合等一定の支配要件を満たす場合
  • 上記の判定対象の特定の人または会社の基準期間(新規設立の法人から見て)の課税売上高が5億円超

 

こちらの判定は、やや複雑なため慎重に行う必要があります。特に複数の会社を経営している場合には、どこの会社までが範囲に含まれるかなどをしっかりと検討しないと意外と見落としてしまうかもしれません。

 

特に、個人の方がいくつか会社を所有している場合に注意が必要です。

まとめ

会社を作れば最初の2年は免税ということが一般的な知識としてお持ちの方が多いと思いますが、以上のような例外もいくつかありますので、思わぬ落とし穴にはまらないようにご参考にしていただければと思います。

【子育て日記】
肉が好きな娘。にんにくという言葉をきくと肉と勘違いしにっこり😊長男は、最近会話の返しが鋭いときもあり、ちょっとビックリ❢公文で国語を習っているおかげかなと。