とある新聞記事を見てマニュアルの是非について考える

おはようございます。
川越・ふじみ野・富士見・三芳エリアで活動する公認会計士・税理士の榎本です。

 

先日、新聞記事で日本代表する高収益企業のキーエンスが新たなビジネスとして自社が持つ営業ノウハウをオープン化して売り出すという記事を見ました。背景には、事業環境の変化に伴い新しい収益の柱の構築が求められているようです。日本トップクラスの営業利益率を誇る企業でさえも危機感を感じているのかと現在の経済情勢の不透明感を改めて実感させられました。

 

今回の記事にあったようにノウハウをマニュアルにして残すというのは、どの会社でも行っており、そうすることで業務の効率化や知識の蓄積につながります。今日は業務マニュアルという点を掘り下げて考えてみます。

マニュアル化することで見えてくるもの

ノウハウや経験といったものは、かつては、人と人とのコミュニケーションの中で伝承されてきましたが、これは、終身雇用を前提とした社会システムがしっかりとした基盤としてあったことが大きな支えとなっていたと考えられます。

 

しかし、バブル崩壊後は、この構造が徐々に崩れ、世代間での経験や技術の伝承がうまくいきにくいものになったので、何事も文書化して経験やノウハウを伝承することが一般的になり業務のマニュアル化が進み、この結果、今まで属人的に人の中に作られた経験値やノウハウが文書化されることで、属人的なモノだった業務が標準化され誰しも同じような成果物をアウトプットできるようになりました。

 

自分も監査法人で働いていた時に、監査業務に関してある程度標準的な手続きのモデルのようなものがあり、新しく入ってくる方にも、それをもとに説明していたので、マニュアルの便利さというものを実感しました。

 

また、このマニュアル化は、ITの進化もそれを助けたと考えられます。マニュアル化には、大量の文書やデータが生まれますが、これらを効果的に加工したり保存したりするのにはIT技術の進歩が欠かせないものだったと思います。

 

自分自身もいくつかの会社で体験しましたが、こうしたマニュアルのおかげで、人の入れ替わりや異動があってもスムーズに業務の引継ぎや説明ができるようになったり、成果物を一定以上のものに仕上げたりすることができたりと組織全体で業務の質を向上させることや業務の効率化に一定の効果があるということを実感しました。

マニュアル化で失われかねないもの

一方、業務をマニュアル化することで何でもかんでもいいかというとそうでない点もあります。実際に自分自身もそのあたりを体験しました。

 

先ほどまで書いたように、見える化することで標準化された業務ですが、マニュアルがあることでそれを中心にした業務しかしなくなってしまうといったデメリットもあります。

 

要するに、マニュアルに頼りすぎて業務を進めた結果、派生論点やイレギュラー事象への対応能力が弱くなり、それらのことを見落としてしまうデメリットも一つとしてあります。

 

これは、マニュアルに沿って業務を行うことで、本質的なことが何かを考える機会が減ってしまい、先ほど書いたようなイレギュラーな事象や派生論点といった応用問題に対応するのが難しくなるためです。

 

実際、監査法人で仕事していた時も、マニュアルがよくできていたので、スタッフメンバーの方はそれに則った形で業務をしてくれるので、スムーズに進み、結果にばらつきも出なかったのですが、時折発生する応用問題への対処が十分にできていなかったと感じました。

 

人間、考えながら仕事する時間もそれなりにないと、どうしても本質的な問題が何かわからなくなり、応用問題への対処が十分できなくなってしまうので、個人的にはマニュアルで業務を標準化しつつ、一方で考えることを忘れないよに意識しながら仕事をすることが大切なのではないかと改めて思いました。

 

組織を運営するうえで、マニュアルの存在は必須ですが、マニュアルだけに頼りすぎず、個人が考えて仕事ができる時間と環境を整えていけるようにすることで、昨今の人手不足や人材育成問題を少しでも解決していけるのではないかと考えます。

まとめ

マニュアル化によって標準化、見える化、効率化することで空いた時間が生まれてくるので、その時間を少し考えたり検討したりする時間にあて、業務の本質を見落とさないようにするサポートができると人材の育成にもつながるのではないでしょうか。

【子育て日記】
週末は、長男は妻の実家に1泊2日で妻と二人で帰り、今年最後の縁日に行きました。実家では、祖父に遊んでもらったのがよほど楽しかったのか、帰ってきてからは、その反動でテンションがかなり下がり寂しさを隠せない様子でした。下の子は、夏風邪のため自分と二人でお家でお留守番。