個人事業主の開業後の経理処理~発生主義と現金主義について~

おはようございます。
個人で事業を始められた方の中で、
比較的小規模の方に使える
例外的な簡便な処理について、
原則的な処理を交えてご紹介します。

発生主義(原則)

簿記を少し習われた方なら、ご存知かも
しれませんが、複式簿記の世界では
「発生主義」という考え方で経理処理するのが

一般的です。

イメージとしては、
2019年12月に100の商品を販売し、
代金は2020年1月にもらう場合は、
以下のように処理をします。
2019年12月
売掛金100
売上100
2020年1月
預金100
売掛金100

要するに、税金を計算するうえでの
収入の認識をするタイミングが、
「いつ」売上が発生したかが重要で
「いつ」代金を回収したかでははない
という形で考えます。
(もちろん代金を回収するのも大事ですが、
あくまで税金計算上の収入の認識のタイミングを

ここではお話しています。)

これを踏まえますと、このケースでは、
収入は代金を回収した2020年ではなく、
商品を販売した2019年の収入として税金計算
することになります。
費用も同じで、2019年12月に発生した水道光熱費50を
2020年1月に支払った場合は、以下のように処理し、
こちらも収入同様で「いつ」発生したかが重要で
「いつ」支払ったかではないということになります。
この場合は、税金の計算において、収入同様
2019年の費用として処理することになります。

 

2019年12月
水道光熱費50
未払費用50
2020年1月
未払費用50
預金50

「現金主義(例外)」

ここまでは、複式簿記の原則である
発生主義についてご紹介しましたが、
中にはもっと簡単に確定申告の決算書を
まとめたいという方もいらっしゃいます。
そういった方は、現金主義で経理処理して
決算書を作成することもできます。
現金主義で決算書を作成できるのは、
以下の方に限ります。
要件①所得金額(収入―経費)の金額が300慢円以下の方
要件②所得税の青色承認申請書兼現金主義の所得計算による旨の届け出を提出

ただ、個人的には、この方法は
あくまで以下のような方だけに限って
お使いいただくのがよいかと思います。

・不動産所得者で、
不動産の数が限られており、
その収入が毎年変わらない。
・事業所得者でも今後も規模の拡大を
図らず小規模のまま続けたい方 など


というのも、当初事業規模が小さいので、
この方法で処理していても事業規模が
大きくなっていった場合にどこかで使えなく

なる時が来ます。

その際には、発生主義に移行するための
調整が必要になりますので、
そのあたりが若干面倒かと。

現金主義のメリット・デメリット

現金主義のメリットは、
なんといってもその処理の簡便さです。
収入と支出をそのまま現金の出入りと
合わせればよいので、
発生主義のように、いつの売上で
いつの経費かということをわざわざ
気にせず処理できますので。
ちなみに、上記の例では、売上も経費も2020年
1月に計上することになります。

 

一方デメリットとしては、
あくまで現金の入りと出をベースに
経理処理しているので、
正確な利益の計算ができず、
将来予測が立てにくい点が挙げられます。
また、青色申告者の特典の一つである
65万円の特別控除は受けられず、
10万円の控除にとどまりますので、
差し引き55万円所得に影響が出ます。

発生主義ではないので、

正確な比較にはなりませんが、
目安として考えると、
税率10%で5.5万円、20%だと
倍の11万円税額に差が出る可能性が

あります。

この金額は、決して小さい金額では
ないと思いますので、このようなデメリットも
考慮に入れつつ現金主義を採用するかどうかは
ご判断いただく必要があります。

【編集後記】
連休明けの一週間が終わりました。
完全に休みにしていなかった分
普段のペースに戻しやすかった気がします。
休む時は休むのが大事ですが、
その中でできる調整もしておくことは
必要かなと感じました。