ふるさと納税はどこに向かうのか?~「寄付」という文化がまだ根付いていない日本において~

最近、ふるさと納税に関して規制や見直しの動きが
新聞やTVのニュースでよく見かけます。
個人的には、都心から地方に税金が還流する点は、
評価できますが、その見返りとして
過度な返礼品を行っている自治体については、

少しやりすぎかなというのもあります。

世論も批判的な意見は多く政府も見直しや規制を
検討しています。
ここで、改めてふるさと納税の仕組みや
制度の趣旨を含めて考えてみます。
(ここでは、個人版ふるさと納税について考えます)

ふるさと納税の仕組

はじめに、ふるさと納税の仕組みですが、
この制度は、税法上「寄付金控除」という形で

納税者の税金を少なくしてくれます。

実務的には、会社員の方は源泉徴収された
税金の還付、個人事業主の方は源泉徴収があるお仕事
であれば還付、そうでない場合は支払額の減額という
効果をもたらします。いずれも確定申告で
行うことになります(寄付先が5か所以下であれば

確定申告不要のワンストップ特例という制度もあります)。

確定申告により税金が少なくなったうえに、
寄付をした自治体から返礼品を受けることが
できるので、感覚として二重で得をした感じに
なります(一部の自治体では返礼品がない純粋に
寄付金となる自治体もあります:本来的には
この姿が健全な寄付の姿と思いますが…)。

ふるさと納税の限度額について

では、実際に寄付をするにあたり、
よくお客様からいくらまでなら損しないの?
というご質問を受けますが、

これは、人によって異なってきます。

寄付金は、「個人所得税」と
「個人住民税」の2つの税金を
少なくする効果がありますが、
このうち「個人住民税」における限度額が

一つの目安となります。

ご自身の限度額の目安を知りたい場合は、
住民税決定通知書(役所から毎年5月くらいに
もらう細長い紙)があれば、計算できます(下記計算式参照)。
ただし、この所得はあくまで前年のものなので、
今年の所得が同じくらいであれば、参考になりますが

大幅に異なる見込みであればその分を調整する必要があります。

ふるさと納税限度額=(住民税の所得割×20%)÷(100%-10%-所得税率×102.1%)+2,000円

 

※1:住民税の所得割は、決定通知書の④税額控除前所得割額(道府県と市町村の合計)で求められます。
なお、住宅ローン控除がある方は⑤の税額控除を④から差し引いたものとなります。
※2:所得税率は、リンクの表からご自身の所得に該当するところから選んでください。
源泉徴収票をお持ちの方は、「給与所得控除の金額」-「所得控除の金額」となります。
確定申告書をお持ちの方は、第1表の⑨の金額となります。
※3:所得税と住民税の基本部分で総所得をベースにした限度額がありますが、こちらは
該当の可能性が低いので、ここでは多くの方が該当する可能性がある住民税特例部分を

ベースとした計算式としています。

以上のように計算して限度額を求めれば、
その金額の範囲内で寄付をすれば、寄付金の効果を
最大限にしたうえで、返礼品まで受け取れるということで

大変お得です。

ただ、税金の軽減効果は、所得税については
還付若しくは納付の減額をタイムリーに実感できますが、
住民税については、翌年度以降にその効果が出てくるので、

時間差があるということを覚えておく必要があります。

具体例:2019年に寄付を行った場合

「所得税の還付/支払の減額」―2020年3月ころ
「住民税の減額」ー2020年の6月から2021年5月にかけて
12か月で住民税額を毎月減らす(特別徴収の場合)

寄付金の在り方って…

このように現在の日本のふるさと納税制度は、
返礼品という特典とセットで寄付が行われているのが実情ですが、
本来、寄付金というのは、慈善行為の一環として

見返りなどを求めない行為です。

欧米などでは、富裕層を中心に少しでも富を社会に還元する
ということを目的として寄付行為が行われています。
例えばMicroSoftの創業者であるビルゲイツは、
自らビル&メリンダ・ゲイツ財団を国際的な医療、教育、
貧困対策等への壮大な慈善活動を行っており、

これらはみな寄付金をもとにしています。

一方日本では、欧米に比べ寄付の文化が根付いておらず、

それは実際の数値を見てもわかります。

イギリスと比較して1桁、アメリカとは2桁も違います。

このような寄付文化が根付いていない日本で、
ふるさと納税は、地方活性化のために
都心部から少しでも税金を地方に還流させ、税収で悩む
地方財政の助けになることがきっかけとされていますので、

以前に比べ地方の税収が増えたのはよいことです。

しかし、冒頭記載した見返りとしての返礼品が
過度の競争となっていることが
なんとも本末転倒というか寄付本来の姿とは
かけ離れているのが少し寂しいところではあります。

今後のふるさと納税についての私見

個人的には、返礼品という形ではなくもう少し長い目で
寄付と地方活性化を考えていってはどうかと思います。
例えば、寄付金を使って

地方再生・地方復興を行うファンドを設立するなど。

地域のシンボルとなる地元の中小企業・老舗旅館
特産品を扱う農家・地方競馬場等の団体の中で
経営が苦しいところへ支援をするファンドの資金を
寄付金で集め、出資者は一定の控除を受けられるように
すればもう少し実のあるお金の使い方ができ、

社会の活性化になるのではないかと思います。

また、そのファンドが再生に成功した際の
配当なども非課税にすれば、出資者にとっての

資金運用という面でも一定の効果も出てくるかと思います。

ただ、これらをファンドの選定ついては、しっかり選別し
投資先にとって最大の効果をもたらせるようなところを選び
出資者にとってのリスクも比較的低くなるようにして、

資金を集めやすい仕組みを作っていく必要があるとは思います。

また、外部からの監査を必須として、投資家からの資金運用が
適切に行われかつ経営実態も健全なものとなっているかということの
チェック体制も併せて整えていく必要があります。

まとめ

今回挙げたのは一例にすぎませんが、今後は返礼品とセットでの
寄付金(現行のふるさと納税)も生かしつつ、別の形での
ふるさと納税の姿も考えていく必要がある段階にあると

最近のふるさと納税を取り巻く状況を見ると感じました。


【編集後記】

昨日から妻が職場復帰し、今朝は早く家を出たため、朝長男がややご機嫌斜めになりちょっと大変でした。

平日晩酌禁止ルール15日継続中