財産分与と税金について

おはようございます。

 

川越・ふじみ野・富士見・三芳エリアで活動する公認会計士・税理士の榎本です。

 

昨今、日本では、3組に1組が離婚するといわれています(自分の周りでもそのようなことを耳にします)。

 

離婚の際の協議仲介や裁判所とのやり取りは、弁護士の方が仲介することが多く税理士の出番は基本的にありません。

 

しかし、離婚の際に行われる財産分与も場合によっては課税関係が発生しますので、そういったときは、税理士のアドバイスなども必要になるかもしれませんので、今日はそのあたりについて整理してみます。

財産分与と課税関係

まず、離婚の際の財産分与については、法律上どこで規定されているかというと、民法768条に明文化されています(民法749条、771条の準用の場合を含みます)。

 

財産分与は、当事者間の協議や裁判所の調停等を通して行われ、その対象は、金銭や不動産等が一般的です。

 

この財産分与は、一見すると贈与にあたるかに見られますが、その点は相続税法の基本通達に一部の場合を除き贈与ではないことが明記されていますので、通常は贈与税の対象からは外れます(相基通9-8)。

 

これは、婚姻中の夫婦の協力の結果形成されたものであり、各自に潜在的に持ち分があるということが前提となっているからです。

 

一方で、この財産分与が金銭のみでなされる場合であれば特に課税関係の問題は発生しませんが、不動産(通常は居住用不動産)が含まれる場合は少し注意が必要です。

 

財産分与に不動産を含む場合は、該当の不動産については、保有期間中の値上がり益の清算を行うことが税務上求められていますので、分与時の時価で譲渡したとして、譲渡所得の申告が必要になる場合があります。(所基通33-1の4)

 

仮に値上がり益がそれなりにあり税金が発生してしまった場合、何ら対価(収入)も得ていないのに税金を納付しなければならないため、譲渡者は不利な立場に置かれてしまいます。

 

そこで、次に書くセーフティーネット(特別控除)を利用することで一定程度税負担の軽減を図ることができます。

財産分与と特別控除

先述したように、財産分与による不動産の譲渡所得については、対象が居住用財産であれば、居住用財産の譲渡にかかる3,000万円の特別控除が使えます。

 

つまり、譲渡時価と取得費の差である値上がり分が3,000万円以内であれば、この特別控除によって譲渡所得にかかる税金を納めなくて済みます。

 

ところで、この特別控除を適用するには、いくつか要件がありますが、その中の一つに譲渡の相手先による制限があります。

 

譲渡の相手先が、配偶者や親族などの特殊な人的関係がある方ですと、当該特別控除が適用できません。

 

しかし、離婚の結果、元配偶者方は、この適用制限となる相手(配偶者)からは除かれますので、3,000万円控除を堂々と使うことができます。

 

ちなみに、財産分与を受けた方の不動産の取得費は、分与時の時価で取得したことになります。

 

例:夫から妻に財産分与として居住用財産を譲渡
居住用財産の時価:4,000万円
取得費:2,000万円
夫の譲渡所得:4,000万円(収入)-2,000万円(取得費)-2,000万円(特別控除)=0
妻の取得費:4,000万円

 

収入4,000万円
-
取得費
2,000万円
4,000万円
譲渡益2,000万円-

 

また、長期譲渡所得の特別税率についても要件(譲渡の年の1月1日時点で所有期間が10年超)を満たすようでしたら適用が可能となります。

まとめ

離婚協議等の仲介は、弁護士の方などが通常行いますので、税理士の出る幕はございませんが、先述したような不動産での財産分与で譲渡所得が発生してしまう場合などには、ちょっとしたアドバイスなどで、思わぬ税金の支払いを回避することはできるのかと思います。

【子育て日記】
下の子は最近よくミカンを食べます。これから冬なのでビタミン摂取にはいいのですが、長男のように嫌いにならないか心配です。

 

長男も1歳半くらいの時よくミカンを食べたので、調子に乗ってあげ過ぎたら、いつからか全く食べなくなり今に至ります…