賞与に係る社会保険料の債務確定時期と法的安定性の確保について考える
おはようございます。
ふじみ野・川越・三芳・富士見エリアで活動する公認会計士・税理士の榎本です。
先日とあるお客様の決算で少し税法の債務確定とはどういったものかといったことについて考える事例に遭遇しました。
内容は、賞与の社会保険にかかる社会保険料の債務確定をどの時点で見るべきかということです。
社会保険料の損金算入時期
一般的に社会保険料に関しては、法人税法基本通達9-3-2で明記されているように、計算対象となった給与の支払いが事業年度内のものであれば、支払が事業年度末日の翌日でも事業年度の損金に算入できるということになります。
例えば、3月決算の会社で3月25日の給与にかかる社会保険料の支払は、4月の給与から徴収して納付するのが一般的ですが、3月給与にかかる法人負担の社会保険は、3月中の給与が発生のベースとなっているので、通達に従えば3月末で債務確定はしているので、3月の未払い費用で計上が可能ということになります。
一方で、これが給与ではなく賞与にかかるものについてはどうなのかといったのが今回の疑問です。
賞与の社会保険料と損金算入時期(債務確定時期)
賞与にかかる社会保険料は、協会けんぽに加入している会社などの場合は、通常、所轄の年金事務所に賞与支給届を提出した後に、年金事務所が給与にかかる社会保険と合わせて控除する(場合によっては、振り込みもある)のが一般的ですが、この届出を仮に提出が遅延もしくは失念していた場合には、年金事務所も賞与支給の事実を把握できないので、法人からの保険料支払が遅れたり、支払がなされないことになります。
では、そういった場合に法人側でも賞与支給にかかる社会保険の支払義務が生じていないとみるのかあるいは賞与支給にかかる届け出の提出の有無はただの事務手続きなので、法人としての社会保険の支払義務は「賞与の支給の事実」をもって認識するかが論点となります。
個人的な考えや他の税理士の方の意見を総合した中で得られた結論は、「賞与の支給事実」が、法人にとっての社会保険にかかる支払義務の発生(法人税法22条3項2号)つまり債務確定のための要件に該当し、金額も合理的に見積もれるので、賞与支給届出書の届け出が仮に遅延もしくは失念していても会社としては賞与支給にかかる社会保険料の債務は、賞与を支給した事業年度で認識すべきということになると考えられます。
仮に、賞与支給届の提出がない場合に未払債務が認識できないという立場に立つと、単なる事務手続のタイミングで債務確定の時期がぶれてしまうといった法的安定性の確保につながらないことを考えると、やはり賞与支給の届け出をトリガーにするのは、難しいのではないかと考えます。
まとめ
今回の件を通じて学んだことは、今回のような少し細かい論点あるいはイレギュラーな論点の場合には、税務が租税法という法律に基づいていることを考慮し、問題解決には法律を重視したうえで、法的安定性を満たしているかといったことをベースにすると問題の解決につながるのではないかと思いました。
そして、より実務的な内容に入る際に、通達なども併せて考えると第3社への説明がより良いものになると思います。
【子育て日記】
先日、長男が2年生の秋より始めた公文英語で一定水準の進捗に達したので、表彰の意味でキーホルダーをもらってきました。
長女は、それを羨望のまなざしで見つつ自分には全然いいところがないとだいぶ卑屈な態度になっていました。
親としては、そんなにいじけなくてもと思ったのですが、自己肯定感が低いのが理由か何かわかりませんが、すぐにいじけてしまいます。それも成長の一つと思い、長い目で見ていければと思った次第です。